風が吹いたあとに落ちてくるもの
友達が先月、格安でマンションを借りました。
あんまりにも安いので、
「なんかあるんと違う?」
と聞いてみると、
「実は夜中に仕事中(マンガ家)、
窓際の机の所に座ってると、
上から風が吹くんだよ!
だいたい2:50くらいだったかな?
ほとんど毎日ね」
それは凄いということで、
次の日マンションに泊まりにいく事にした。
夜中二人で酒を呑んでると、
ブォンと風が吹いた。
時計を見ると2:50だった。
「な、本当だったろ!」
友人が言った瞬間、私は凄いものを見た。
風の後に逆さまに落ちてくる男を見たのだ。
私はその男と目が合ってしまった。
「今、男が一瞬落ちて来た!」
私は友人に言ったのだが、
「ハイハイ。調子に乗って脅かさないの」
と信じてくれないので、
「じゃあ今夜も泊まるから、
お前もその男を見るべきだ!
そして、ここは引き払え!」
と言い放ちました。
また今夜も2:50がやって来ました。
風が吹いたあと、二人で目を凝らして
窓際を見ていました。
すると、頭の先が
ゆっくりと窓際の天井から現れ、
やがて全身が現れ、
机をすり抜け、床に消えました。
今度はかなりゆっくりでした。
男が現れた間、男の虚な視線を
二人とも感じていました。
後日、マンションのオーナーに
この事について聞いてみると、
その部屋がある棟は、
増設されたものだったのだ。
よって、昔は無かった。
ある日、そのマンションの住人が
飛び降り自殺をしたらしい。
その後、窓から男が落ちてくるのが
毎日見えるという苦情が、
角部屋全階から殺到したため、
部屋を増設し、新に角部屋を作ったらしい。
しかし、今度は部屋の中に現れるので、
入居者が減った。
そこで、角部屋全階を格安家賃にしたらしい。
仕事中の友人を、自殺者の霊が
毎日すり抜けていたのを考えるとゾッとするが、
彼は今もそこに住んでいる。
(終)