死んだ従兄弟からの電話

高校時代の友人Y君の体験談です。

 

ある朝、学校に行くと元気者のYが

真っ青な顔をしているのに気づき、

どうしたのか聞いてみた。

 

「何でもない」と返事はするものの、

何かに怯えている様子だった。

 

こちらも無理に聞き出すつもりは無かったし、

「そうか」とだけ言っておいた。

 

昼休み。

 

朝と変わらず怯えた様子のYが

話し掛けてきた。

 

内容は「ちょっと相談に乗って欲しい」

との事だった。

 

弁当でも食いながら

聞いてやるつもりだったが、

話の内容は、

そんな他愛無い内容ではなかった。

 

前の晩の話。

 

部活で疲れていたYは、

両親が出掛けている事もあり、

夕食後、早々に自室の布団で

寝てしまったそうだ。

 

そこで夢を見た。

場面は自宅の居間。

 

Yはソファーで、

一人テレビを見ていたのだが、

そこに一本の電話。

 

出てみると、Yと相手は同い年の

従兄弟だったそうだ。

 

だが、その従兄弟の話す内容、

また声の感じも、

幼稚園児と話しているような幼さで、

Yは少々違和感があった。

 

でも久しぶりな事もあり、

「一緒に遊びたい」とか、

「今度どこかに行こう」

といった話をしていたそうだ。

 

5分ほど話したところで、

Yに、ある疑問が浮かんできた。

 

「この従兄弟、死んでなかったっけ?」

重大な疑問にぶち当たったY。

 

しかし従兄弟はそれにはお構いなしで、

一人でしゃべっている。

 

段々怖くなってきたYは、

「もう遅いから」とか「親が帰ってくる」

などの理由をつけて

電話を切ろうとするのだが、

従兄弟は相変わらず

一方的にしゃべっている。

 

話すペースはどんどん速くなり、

テープの早送りのようで、

何を言ってるのか解らなくなってきた。

 

恐怖に駆られたYが

「もういい!(電話を)切ろう!」

と思った瞬間、

従兄弟の話すペースが普通に戻った。

 

そして次の一言が、

「どうして私だけ死ななきゃならないの」

と、年相応(生きてれば)の声で

言われたそうだ。

 

その一言で恐怖のピークに達したYは、

電話を叩き切った。

 

そこで夢から覚めたそうだ。

 

夢から覚めたYは一瞬ほっとしたのだが、

直ぐに夢の内容を思い出し、

話をしていた従兄弟が

誰だったのかを考えた。

 

そして思い出した。

 

Yが3歳のとき、

通っていた幼稚園の火事で、

ただ一人焼死してしまった

従兄弟がいたことを。

 

「ただの夢であって欲しい」

そう思ったYは、

夢の場面であった居間へ行き、

そこで2回目の恐怖に襲われたそうだ。

 

暗闇の中、

寝る前に消したはずのテレビが

砂嵐の状態で点いている。

 

そして、夢の中で叩き切った電話が、

テレビの明かりに照らされ、

受話器が外れていた。

 

パニックに陥ったYは電話線を引っこ抜き、

自室に駆け込み、

テレビと蛍光灯を点けっぱなしで、

布団を被ったまま、朝を迎えたそうだ。

 

弁当を食べるのも忘れ、話に聞き入っていたが、

ある事を考えていた。

 

「こいつ漕艇部だ・・・。

水に引き込まれるんじゃないか?

やばっ・・・」

 

Yはというと、

何だか目の焦点が合っていない。

 

危険を感じた僕は、Yと一緒に早退し、

Yを家まで送り届け、Yの母親に事情を話した。

 

その日から一週間、朝夕の送り迎え

(自分の家は反対方向なのに)

をした結果、

ようやくYは立ち直り、

現在は元気に暮らしています。 

 

(終)

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