押入れの襖を開けるのが怖い
家族以外は知らないし、誰にも話したことはない。
今でもトラウマになっている話。
うちは転勤族で、子供の時は2~3年おきに引っ越しをしていた。
小学3~4年の時に住んでいたのは京都のとある市だったのだが、アパートの裏は山になっていた。
近所の友達とよく裏山を探検していたんだけれど、親から「山に入るな」と言われていたのもあって、あまり奥までは入らなかった。
そんなある日、親たちには内緒で、友達3人くらいと裏山の奥まで入ったことがあった。
押入れの中に・・・
裏山に入って30分ほど適当に歩いていたら、廃屋を見つけた。
別に変なところはない普通の廃屋だった。
俺たちはテンションが上がって、廃屋の中に入って探索を開始した。
平屋の3LKくらいの間取りだったと思う。
廃屋のリビングと思われる部屋にエロ本が数冊落ちていて、エロガキだった友達たちは歓喜してそれを読んでいた。
俺はまだそこまで興味がなかったから、友達がエロ本を読んでいるのを後ろから見た後に、別の部屋を探索した。
隣の部屋に入ったけれど、特に家具とかは無かったと思う。
押入れが一つあるだけだった。
俺は何となく、その押入れの襖を開けた。
すると、押入れの上段に小太りのおばさんが後ろ向きに正座をちょっと崩した感じで座っていた。
あまりにも予想外すぎて、恐怖とか疑問より、その時の俺は「怒られる!」とパニックになった。
しかし、数秒経ってもおばさんはこっちに背を向けたままだったので、「おばさんは俺にまだ気付いていなくて、このまま静かに襖を閉めればバレないんじゃないか?」と思った俺は、静かに襖を閉めようとした。
そして襖に手をかけた瞬間、おばさんが突然振り向いた。
今でもはっきりと覚えているが、そのおばさんの顔が本当にヤバかった。
眼球が無くて、目の部分がぼっこりと黒い穴が開いていた。
口を開いていたんだけれど、歯も無かった。
そして、顔のいたるところから血が流れていた。
俺は大声で叫ぶと、一目散に家を飛び出た。
友達を置いて・・・。
帰り道の道中はよく覚えてないけれど、なんとか家まで帰ってきた。
走っている最中、ずっと泣きっぱなしだった。
家の前まで来ると幾分冷静になったんだけれど、この事を親に話そうか迷った。
話したら怒られると思ったからだ。
「勝手に裏山の奥に行って!!」と。
結局、黙っていることにした。
それに、置き去りにした友達のことなんてすっかり忘れていた。
家に帰ってから、怖い気分を払拭するためにファミコンを始めた。
確かドラクエ3だったと思う。
俺の家のファミコンがある部屋には襖がある。
ドラクエをしている途中に、襖の方から音が聞こえた気がして振り返った。
すると、襖が少し開いていて、中からさっきの顔面ぐちゃぐちゃのおばさんが見ていた。
俺また絶叫して、台所にいる母親に泣きついた。
「押入れにおばさんがいる!」と。
母親は俺をなだめた後、ファミコン部屋の押入れを確認に行った。
もう俺はただただ怖くて、台所で固まっていた。
すぐに母親が「何もいないじゃない」と言ったから、恐る恐る確認に行った。
母親は襖を開けたまま、「どこにおばさんがいるの?」と訊いてきたけれど、おばさんはまだ襖にいて、眼球が無いのに俺の方を見ていた。
なぜか母親には見えていなかったようだ。
俺はそこで気絶した。
それ以来、押入れのある部屋がダメになった。
旅行先の旅館の押入れにも居た時はマジで困った。
今も押入れにまだおばさんがいるのかは分からないけれど、怖くて確認は出来ない。
それに、今まで3回そのおばさんを見てきたけれど、見る度に少しずつ押入れから体を出してきている気がする・・・。
(終)