路上駐車のフロントガラスに映る恐怖
これは、ありふれた路上で不気味な体験をした話。
小雨が降り出しそうな曇りの日、人通りの少ない道を歩いていた。
すると、公園の横に路上駐車していた軽自動車の運転席から、小さめの人がこちらをじっと見ている。
曇り空が映ったフロントガラス越しだったので、最初は「あの人こっちを見てるのかな?」と、気持ち悪く思った程度だった。
しかし、近づいて行くにつれて、おかしなことに気づいた。
その人は目を見開いており、形相が異様。
睨まれる覚えがないので強気で見ていたが、あることに気づいた瞬間、ゾッとした。
その人はフロントガラスと同じ角度の姿勢なのか。
どうやら背が低いわけではなく、斜めなので小さく見えているようだった。
「ん?映ってる?」
そう思って運転席側のサイドガラスに目をやると、横からは誰もいない車内のシートが見えた。
平静を装って後ろを向き、人がいないか確認する。
誰もいない。
映り込んだ角度から上の方も確認したが、見えたのは遠くにアパートが一軒だけ。
アパートに人がいたとしても、こんなに大きく映るわけがない。
とても恐ろしくなり、もうその車の方は見れなかった。
逃げ出そうか迷ったが、何も見なかったことにして足早に車の側を通り過ぎた。
次の日に学校でこの出来事を話すと、その近くに住んでいるクラスメートが教えてくれた。
「以前、公園付近の木で首吊りがあった」と。
アパートの手前には、太く大きな木の枝があった。
もしかしたら木にぶら下がったその人と、ガラスを通して目が合ってしまったのかもしれない。
それ以来、路上に停まった車を見かけるたびに怖くなる。
(終)