30年間もあんな孤島で生きていけるはずがない
私とツレの二人で、好奇心ゆえに無断で軍艦島に探索に行った。
※軍艦島
端島(はしま)は、長崎県長崎市(旧高島町)にある島である。明治時代から昭和時代にかけて海底炭鉱によって栄え、東京以上の人口密度を有していた。しかし、1974年(昭和49年)の閉山にともなって島民が島を離れてからは無人島である。軍艦島(ぐんかんじま)の通称で知られている。(Wikipediaより)
私は、当時のまま時が止まっている軍艦島に感動した。
存分に探索した後、昼間のうちに帰ることに。
ボートに向かっている間、ツレが何度も後ろを確認している様子だった。
「どうした?」
「いや、何かいるような気がして」
とんでもない。
今ここに来ているのは私達だけなのだ。
ボートまであと少しという時、私は携帯が無いことに気づいた。
さっき転んだ時に落としてしまったのだと思い、ツレをその場に待たせて取りに行くことにした。
幸い、50メートルほど戻った所で携帯はすぐ見つかった。
ツレの元に戻る間、ふと何かの視線を感じたが意識しないようにした。
その日は無事に私達は家に帰った。
しかし2日後、私は現像した写真を見て驚愕した。
それは心霊写真と言えるのか言えないのか・・・。
なぜなら、中年の汚ない男がハッキリと写っていたからだ。
ビルの影に隠れながら、じっと私達を見ている。
心霊とは違い、ぼやけずに写っている事が不気味だ。
私は何か思い当たる節があり、軍艦島関係の記事をネットで調べてみた。
膨大な量に諦めかけていた時、それはあった。
30年も前の記事だ。
『少年五人軍艦島に行き一人行方不明』
『少年の捜索難航いまだ見つからず』
まさか・・・と思いながらも写真を破り捨てた。
30年間もあんな孤島で生きていけるはずがない。
写真に写っていた中年の汚ない男は一体何者なのだろうか。
(終)