深夜の高速を走っていた路線バスには
私はバスの運転手をしていて、その日は東京から京都まで夜行便の運転だった。
乗務する運転手は私を含めて二人で、途中で交代をする。
深夜の高速をひた走っていると、前方にバスを見つけた。
そのバスは一般道を走る路線バスタイプで、高速を走る観光バスタイプではなかった。
私は、(おっ!路線タイプが走ってるなんて珍しい!)と思い、どこの会社だろうかと追い抜きざまにチラッと見る。
すると、5人程だけ見えたその顔は血だらけで、私は瞬時に背筋が凍りつく。
そして前方の行き先幕をサイドミラーで確認すると、『夜見』となっていた。
その後、無事にバスは京都に着き、お客さんの荷物を降ろしていると、「昨日メッチャ怖い夢見てん」と、乗っていたお客さんが友達に話していた。
話の内容は、満員のバスで車内は全員血だらけの乗客が乗っていた、というものだった。
私は、(それ、夢じゃないんだよ)と心の中で思いつつ、お客さんに荷物を渡していく。
そして回送で車庫に行く途中、仮眠をとっていただろうと思っていた相方も、「そのバスを見た」と口を開いた。
曰く、お客さんが寝ている時間に喋ると迷惑だろうからすぐには話せなかった、と。
それ以降、そのバスは今のところ見ていない。
(終)