父と祖父が喧嘩をしている時に
これは、祖母が亡くなってすぐの出来事。
父と祖父は犬猿の仲で、時々大喧嘩もしていた。
祖母が亡くなって悲しかった気持ちもあり、通夜のその日、祖父が暴走して凄い喧嘩になっていた。
その時に誰かの携帯電話が鳴った。
聞き慣れない三味線か琴の音か。
よく分からないが、和製の弦楽器の着信音だった。
不思議な着信
その携帯電話は、父が亡くなった祖母に持たせていたもので、入院生活に伴って購入したものだった。
主な用途は、母との発着信。
母と祖母はとても仲が良かった。
聞きなれない曲だったが、どうやら祖母の携帯電話が鳴っている。
もうその時点で奇妙な感じはしていた。
家族間でしか使っていない電話が、着信すること自体が不思議だった。
恐る恐るディスプレイを見てみる・・・。
『着信 ○○○○(母の名前)
090ー××××ー××××(母の携帯番号)』
「おーい、なんか間違えてかけてるよー」と父が言う。
母は自分の携帯電話をカバンから取り出した。
発信していない。
首を傾げつつも電話に出てみた。
・・・無音である。
2分くらいしても無音なので通話を切った。
結局、バグっていたということになった。
後になって気が付いたが、着信履歴が残らなかった。
後日、また喧嘩をしている父と祖父。
私は溜め息をつきつつも、間に入って話をしていた時だ。
突然、あの時の弦楽器の曲が鳴る。
確認してみると、またも母の名前が出ている。
電話にも出てみた。
やはり無音だ。
切れるまで放っておこうという話になり、しばらく放っておいたら切れた。
確認してみたが、やはり着信履歴が残っていない。
その後も父と祖父の二人が揉めた日に限って、その電話がかかってくる。
もちろん履歴は無い。
これは余談だが、私が一番ドキッとしたのは、夜中に台所でお茶を飲んでいたらその着信音が鳴った時だ。(笑)
ちなみに、その不思議な着信以外は普通に発着信可能で、履歴も残る。
ショップに持って行ったが、そんな症状はありえないと言われ、挙句に軽く理由を話したら、「それ絶対に幽霊ですよ・・・怖いですね・・・」と言う始末。(あんた絶対仕事中ってこと忘れてるでしょ、と思う私)
鳴った弦楽器の着信音については、最初からインストールされているものの1つで不思議はないように思うが、祖母の携帯電話の着信音は基本のピピピ音にセットしてあった。
そして、その着信以外はピピピ音が鳴っていた。
もしかして携帯電話が壊れていただけかもしれない。
でも、とても不思議な着信だった。
(終)