彼らには見えてはいけないものが見えていた
小学生の時、近くの神社で写生大会があった時の話。
俺は、友達二人と神社の横にある大きな木を描いていた。
単に木が一番描くのが楽だろうと思ったからだ。
ちなみに、この友達二人は双子の兄弟だ。
描き始めて一時間ほど経った頃、その兄弟の絵を覗き見た。
すると、俺の絵には無いものが描かれていた。
それは、木に何本も刺さった『斧』や『のこぎり』だった。
しかも、兄弟して同じ場所に描いている。
俺が見る限り、実際の木には何も刺さってはいない。
だけど彼らは口を揃えて「いっぱい刺さってんじゃん」と言う。
もう一度よく木を見たが、やっぱり何も刺さっていない。
俺の言動を察したのか、そのうち二人で何か会話を始めた。
「あれ描く?」
「やめようよ、先生に怒られるし」
「可哀想だね」
俺には全く意味不明な会話だった。
それから10年以上が経ち、その双子の兄弟は一人が自殺し、もう一人が失踪した。
きっと、正也と和也には見えてはいけないものが見えていたのだろう。
(終)
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