その写真が一番怖いし不思議だよ
これは、もう20年くらい前の話。
小学4年生の頃、クラスメートの川田君が『心霊写真』を100枚ほど学校に持ってきた。※仮名
夏休み明けで、自由研究の資料だと言うが、私が見ても他の人が見ても、何も怪しいものは写っていない。
ただ、みんなは気味悪がった。
川田君が言うには、見えない人でも目を凝らせば見えるということだったので、私たちのグループは面白がってその写真を借りた。
そのうち私が借りたのは、ただただ真っ白な写真。
「その写真が一番怖いし不思議だよ~」
川田君は笑いながら言ったが、他の写真の方が私には怖く見えた。
お墓で撮影したものや滝で撮影したもの。
廃墟らしき建物のお風呂や台所の写真などもあった。
しかし、家に帰ってから借りた写真を目を凝らして見ても、ただただ真っ白だったので、私はすぐに飽きてテーブルの上にその写真をほったらかしていた。
しばらくすると母が帰ってきて、夕飯の支度をするためにテーブルを拭きはじめた。
そして、「この写真どうしたん?」と、優しく私に聞く。
私は借りものだと答えた。
母は、その写真を半紙のようなもので掴み取り、丁寧に包んで窓辺に酒と塩と一緒に置くと、どこかへ電話をかけた。
その後、4人の大人が家に来て、夕飯を食べている最中に私は連れていかれた。
そこは普通のマンションのような部屋で、桶に入った水で手を洗えと言われ、お経のようなものを詠む大人たち。
私は怖くなった。
たぶん、お経が怖かったのだと思う。
そして家に帰され、夕飯を食べた。
それから1週間ほどして、写真は封筒に入れられて返ってきた。
私は川田君に写真を返したが、中身は怖くて確認しなかった。
川田君は返ってきた写真を見ると、満面の笑みで「ありがとう」と私に礼を言った。
恐る恐る写真を見るが、そこには川田君の家の縁側が写っているだけだった。
川田君いわく、そこには祖父が寝そべっているそうだが、真偽はわからない。
未だにあの写真が何だったのか、わからない。
それに、手を洗いながらお経を詠むという御祓いは、調べてみてもなかった。
何がどうなっているのか、本当に不思議だった。
ちなみに、母に聞いても「知らなくていい」の一点張りで、何も教えてくれなかった。
(終)