心霊写真に写る顔見知りの男 2/2
それからしばらくして、
Dさんに女の子を紹介する事になった。
とりあえず写真を見たいという
先方の要望を伝えると、
Dさんは写真の束を私に押しつけ、
「適当に選んどいてくれ」
とロケに行ってしまった。
仕方なく、
私はDさんの「適当な」写真を選ぶ
という、不毛な作業を始めた。
写真を撮られるのが嫌い
と言うだけあって、
スナップ写真ですら数が少ない。
パラパラと写真を繰っていると、
後ろからポンポンと肩を叩かれた。
振り返ると、
番組の女性スタッフが、
坊さんを一人連れて立っていた。
「今、いいかな?
この人、○○寺の住職さん」
「あー、ハイハイ」
「今度、番組に出てもらうので
打合せに来てもらったんだ。
ちょと部屋借りれる?」
「ちょっと待って下さい・・・」
席を立とうとして、
坊さんの視線がDさんの写真に
向いているのに気づいた。
「この人・・・」
「ああ、番組のスタッフですよ。
今はちょっと出てるんですけど」
ちょっといいですかと断ってから、
坊さんは写真の束を取り上げた。
「おかしな写真ですね。
この人、大丈夫なんですか?」
眉間にしわを寄せて、
そんな事を言う。
「どういう事ですか?」
「この人、
写真の顔と実際の顔が
違う感じがしませんか?
・・・ほら、これも」
坊さんはDさんの写真を
次々と机に並べる。
言われてみれば、
そんな気もしてきた。
「そうですね。
そう言えば本人も写真写りが
悪いって気にしてましたよ」
「そんなレベルじゃないでしょう。
例えばこれ、別人の顔でしょう?」
そう言って、
坊さんはDさんのアゴの辺りを
指差した。
だらしなく、
たるんだアゴ。
「あれ?
Dさんってどっちかっていうと
痩せてる方ですよね?」
女性スタッフが、
頓狂な声を上げた。
確かに、
実際に見るDさんの顔は、
もっとシャープな印象だ。
少なくとも、
こんなにアゴがたるんでいる
ようには見えない。
「何なんですか、これ?」
「顔の下半分が別人と
重なってるんです。
ほら、この写真は
鼻から下ですね」
坊さんは手の平で
顔の下半分を隠した。
すると、
実際のDさんの印象に
グッと近づく。
「・・・で、これは目から上」
別の写真の、
今度は顔の下半分を覆う。
「本当だ・・・こっちの方が
しっくりきますね」
そこで私はあることを思いついた。
2枚の写真のカラーコピーを取り、
それぞれの顔の上半分と
下半分を切り抜いた。
それを合わせてみる・・・。
すると、
例の中年男の顔が現れた。
(※心霊写真の類なので閲覧にはご注意を)
背筋が急に寒くなる。
「・・・これって、
生きている人の仕業ですか?」
「違います、霊ですね。
死霊です。
ここまで綺麗に重なっているのは
記憶にありませんが」
坊さんはあっさりとそう言った。
「たまにあるんですよ、
こういう現象って。
写真写りが悪い時なんかは
要注意です」
「要注意って・・・
霊障とかそういうのは
あるんですか?」
「さあ、分かりません。
ケースバイケースでしょう。
ただ、こうなってしまうと・・」
そこで一呼吸置き、
Dさんの写真を指差した。
「何にせよ、
もう手遅れです」
夜になって帰ってきた
Dさんには、
坊さんとのやりとりは
何も話さなかった。
その後、
Dさんの仕事振りに
変わりはない。
ただ、紹介した女の子には
見事に振られたようだ。
(終)