祖母の還暦祝いの写真がまさか
うちでは毎年、夏になると母の実家へ帰ることになっている。
祖母や親戚に会えるのは嬉しいし、涼しい土地で食べ物も美味しいので、避暑には最高なんだけれど…。
数日泊まる祖母の家で、どうしても気になることがある。
祖母は写真が好きで、居間には沢山の写真が飾ってある。※自分で撮るのが好きなわけではない
その中の、祖母が還暦の時に撮影した『写真』だ。
私が小学校低学年くらいの頃だったと思う。
いつもと同じように、親戚一同がお盆に集まった時だった。
祖母の誕生日が8月ということもあり、還暦のお祝いを盛大にした。
もう昔のことだから細かくは覚えていないけれど、かなり楽しかったことだけは記憶にある。
だから、その時に撮った集合写真が現像され、居間に飾られているのを翌年に見た時は、楽しかった記憶とのギャップで鳥肌が立った。
一見すれば普通の写真だった。
祖母が中央に写っていて、私がその隣で間抜けなポーズをとっている。
他の家族や親戚も綺麗に写っていた。
だけど、明らかにおかしな点がある。
写真は和室で撮った。
その床の間に、ぼんやりと白い顔が見える。
笑っている。
人間の顔ではない。
蛙のような顔をしている。
例えるなら、千と千尋の神隠しに出てくる石人のようなモノが、おもいっきりの笑顔で写っているのだ。※石人(参考)
私は初めてそういった写真を見たので、相当驚いた。
両親にそのことを言おうとしたが、二人共「ああ、あの時の写真じゃん」と言うばかりで、はっきりと写っているソレには気づかない様子だった。
というより、気づかないフリをしているな、と子供ながらそれを感じとった。
確かに、まさか祖母の還暦祝いの写真が心霊写真だなんて、とても言えない。
祖母も親戚も、誰もその写真を見て何も言わなかった。
私より幼い従兄弟や従姉妹たちでさえ、それには触れずじまいだ。
今でもその写真は居間に飾ってある。
毎年のお盆、祖母の家へ行くたびにそれを見るのが正直怖い。
写っているのが既に他界している祖父なら少し嬉しかったけれど。
誰だよ、こいつは。
(終)