隠岐のコトリバコ 7/8
M「効果はAに言ってたようなものだ。
女と子供を取り殺す。
それも苦しみぬく形で。
何故か、徐々に内臓が千切れるんだ。
触れるどころか周囲にいるだけでね。
そして、
その効果を目の当たりにした住民は、
続けて箱を作ることにした。
住民が自分たちのために
最初に作った箱はチッポウだった。
俺が祓った奴だな。
7人の子供の・・・箱。
わずか2週間足らずの間に、
15人の子供と、
女1人が殺されたんだよ。
今の時代じゃないだろ?
ひどいよな・・・
そして、出来上がった箱を、
△▼の庄屋に上納したんだ。
普通に、住民からの気持ち、
誠意の印という名目で。
庄屋の家は・・・
ひどい有様だったらしい。
女子供が血反吐を吐いて、
苦しみぬいて死んだそうだ。
そしてな、
住民は△▼のお偉方達、
△▼以外の周囲地域にも伝えたそうだ。
今後一切部落に関わらないこと。
放って置いて欲しいこと。
今までの怨みを許すことは出来ないが、
放っておいてくれれば何もしないということ。
守ってくれるのなら、
△▼へ仕事に出ている部落の者も、
今後△▼に行くこともしないということ。
そして、
もしこのことに仕返しをすれば、
この呪いを再び振りまくということ。
庄屋に送った箱は、
直ちに部落に返すこと。
なぜ部落を放置するのか、
その理由は広めないこと。
ただ、放置することだけを
徹底すること。
そして・・・
この箱はこれからも作り続けること。
既に箱は7つ存在していること。
7つあるっていうのは、
これはハッタリだったんだろうなと思う。
そう思いたい・・・
言い方は失礼なんだけど、
読み書きすら出来なかった当時の住民に、
これだけのことが思いつくはずは
無いと思うんだが・・・
AAの知恵だったんだろうか。
△▼含め、
周りの地域は全てこの条件を
了承したらしい。
この事件は、
その一時期は周辺に噂としてでも
広まったのだろうかな、
すぐさま部落への干渉が
一切止んだそうだ。
この部落の大人たちは、
それでも作り続けたんだよ。
この箱をね。
すでにAAはどこかに行ってたらしいんだが、
箱の管理の仕方を残していったそうだ。
・女子供を絶対に近づけないこと
・必ず箱は暗く湿った場所に安置すること。
・箱の中身は年を経るごとに
次第に弱くなっていくということ。
・もし必要なくなった、もしくは手に余るようなら、
○を祭る神社に処理を頼むこと。寺ではダメ。
必ず処分は○を祭る神社であること。
そして住民たちは、
13年に渡って箱を作り続けたそうだ。
ただ、最初の箱以外は、
どうしても間引きを行わなければならない
時にだけ。
間引いた子の身体を、
作り置いておいた箱に入れた、
ということらしい。
子供たちを殺すとき、
大人たちは『△▼を怨め、△▼を憎め』
というようなことを言いながら
殺したらしい。
殺す罪悪感から少しでも逃れたいから、
△▼に反らそうとしてたんだろうな。
箱を作り続けて13年目、
16個目の箱が出来上がっていた。
イッポウ6つ、ニホウ2つ、
ゴホウ5つ、チッポウ3つ。
単純に計算しても、
56人の子供・・・
作成に失敗した箱もあった
という話だから、
もっと多かったんだろうな。
そして、13年目に事件が起きた。
その時、全ての箱は
1箇所に保管されてたんだが、
監視を立てて。
だが、11歳になる一人の男の子が、
監視の目を盗んで
箱を持ち出してしまった。
最悪なのが、
それがチッポウだったってこと。
箱の強さは、
イッポウ<ニホウというふうに、
数が増えれば強くなる。
しかも、
出来上がって間もないチッポウ。
箱の外観は分かるよな・・・
Sが楽しく遊んだっていうように、
非常に子供の興味を惹くであろう作りだ。
面白そうなおもちゃを手に入れた男の子は、
家に持ち帰り、
その日のうちに、その子を含め、
家中の子供と女が死んだ。
住民たちは初めて箱の恐怖を、
この武器が油断すれば自分たちにも
牙を向くということを改めて痛感した。
そして一度牙を向けば、
止める間もなく望まぬ死人が出る。
確実に。
そして恐怖に恐怖した住民は、
箱を処分することを決めたそうだ。
それからは大体分かるよな。
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