着物姿の不思議な少女との出会い 2/2

女の子と遊び始めて三年目、

俺が小二の夏のことだった。

 

「多分、もう遊べなくなる・・・」

 

いつものように遊びに行くと、

女の子が突然言い出した。

 

「何で?」

 

「ここに居なくなるから」

 

「えー、やだよ・・・」

 

引越しか何かで、

居なくなるのかなと思った。

 

自分が嫌がったところで、

どうにかなるものでもないと

さすがに分かっていたが、 

それでもごねずにはいられなかった。

 

「どこに行っちゃうの?」

 

「わからないけど。でも明日からは

来ないでね・・・もう、さよなら」

 

本当にいきなりの別れだったので、

俺はもう喚きまくりで、

女の子の前なのに泣き出してしまった。

 

女の子は僕をなだめるために、

色々言っていた。

 

俺はとにかく、また遊びたい、

さよならは嫌だと言い続けた。

 

そのうち女の子も、

つうっと涙を流した。

 

「・・・ありがとう。私、嬉しいよ。

でも、今日はもう帰ってね。

もう暗いし、危ないからね」

 

「嫌だ。帰ったら、

もう会えないんでしょ?」

 

「・・・そうだね。

・・・あなたと一緒もいいのかもね」

 

「え?」

 

「大丈夫。多分また会えるよ・・・」

 

俺は諭されて家路に着いた。

途中何度も振り向いた。

 

着物の女の子は、

ずっとこちらを見ているようだった。

 

その日、祖母の家に帰ったらすぐに、

疲れて寝に入ってしまった。

 

そして俺は、その夜から五日間、

高熱に苦しむことになった。

 

この五日間のことは、

ほとんど覚えていない。

 

一時は四十度を越える熱が続き、

本当に危なくなって、

 

隣の町の病院に運ばれ入院したが、

熱は全然下がらなかったらしい。

 

しかし五日目を過ぎると、

あっさり平熱に戻っていたという。

 

その後、祖母の家に戻ると、

驚いたことに俺が女の子と遊んでいた

山の麓は、

 

木が切られ山は削られ、宅地造成の

工事が始まっていた。

 

俺は驚き焦り、祖母と両親に

山にまで連れて行ってくれと頼んだが、

病み上がりなのでだめだった。

 

それ以来、

俺は女の子と会うことはなかったが、

たまに夢に見るようになった。

 

数年後聞いた話に、

宅地造成の工事をやった時、

 

麓の斜面から、小さく古びた社が

出てきたらしいというものがあった。

 

工事で削った土や石が降ったせいか、

半壊していたという。

 

何を奉っていたのかも、

誰も知らなかったらしい。

 

その社があったのは、

俺が女の子と遊んでいた山道を

少し奥に入ったところで、

 

ひょっとして俺が遊んでいたのは・・・

と思ってしまった。

 

実際、変な話がいくつかある。

 

俺の高校に、

自称霊感少女がいたのだが、

 

そいつに一度、

「あんた、凄いの憑けてるね」

と言われたことがあった。

 

「凄いのってなんだよ?」

 

「・・・分かんない。

けど、守護霊とかなのかな?

わからないや。

でも、怪我とか病気とか

あまりしないでしょ?」

 

確かに、あの高熱以来、

ほぼ完全に無病息災だった。

 

さらにこの前、

親戚の小さな子(五才)と遊んでいたら、

 

その子がカラーボールを使って

お手玉を始めた。

 

俺にもやってみろと言う風に

ねだるのでやってみると、

 

その子は対抗するかのように、

いくつもボールを使ってお手玉をした。

 

何度も楽しそうにお手玉をした。

 

あんまり見事だったので、

後でその子の親に、

 

「いやー、凄いよ。教えたの?

あんな何個も俺だって出来ないよ」

 

と言うと、親はきょとんとして、

「教えてないけど・・・」と答えた。

 

もう一度その子にやらせてみようとすると、

何度試してみても出来なかった。

 

「昼間みたいにやってみて」

 

「なにそれ?」

 

と言う感じで、昼のことを

覚えてすらいなかった。

 

何と言うか、そのお手玉さばきは、

思い返すとあの女の子に似ていた

気がしてたまらない。

 

今もたまに夢に見るし、

あの最後の言葉もあるし、

 

ひょっとしてあの子は、本当に俺に

くっついてるのかなと思ったりする。

 

ちなみに女の子の名前は、なぜか

俺も思い出せなくなってしまっている。

 

不気味とかそういうのはなく、

ただ懐かしい感じがするのみである。

 

(終)

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3 Responses to “着物姿の不思議な少女との出会い 2/2”

  1. 植村雨斉 より:

    ( ;∀;)イイハナシダナー

  2. にゃんころ より:

    連れていかれるのかと思ったら付いてきてくれたのか
    いい話で良かった

  3. 匿名 より:

    初恋だったのかもね・・いい話だ。娘さんとかに生まれてきてくれるといいな。

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