用意されているはずの席が1つ足りない
これは、祖母の四十九日法要後の会食での出来事。
当時留学中だった私は葬儀に帰国できず、この日に合わせて日本に帰りました。
法要が済み、親戚一同で旅館へ移動し、広い宴会場で食事をすることになりました。
ところが、テーブルには人数分の食事が用意されているはずなのに、なぜか一人分の席が足りなかったのです。
旅館側にはきちんと人数を言ってあるのだからそんなはずはないと、みんなで空席を探しました。
私もよく見ましたが、やはりどこも席は埋まっていました。
おかしいなぁ?とみんなして首を傾げていましたが、仕方がないので旅館にお願いしてもう一つ余分に席を設けてもらいました。
そして食事が終わり、奥様方が残ったお料理をおみやげ用のタッパーに詰め始めました。
すると突然、叔母の一人が言いました。
「あらっ、ここ誰も座ってなかったの?」
見ると、私が座っていた真向かいの席は全く誰も座った形跡がないのです。
料理はもちろん、ビールのグラス、日本酒のおちょこ、割り箸…。
どれも手つかずで、そのままの状態でした。
あれほどみんなで空席を探したのに。
その時はどこも人が座っていたはずなのに。
でも不思議なことに、私の真向かいに誰が座っていたのか思い出せません。
別の叔母に「きっとあなたが帰ってきてくれたから、おばあちゃんが嬉しくて傍にいたんだよ」と言われ、私は堰を切ったように泣き出してしまいました。
いつも優しい祖母が私は大好きでした。
きっとあの時、一緒に居てくれたのだと思います。
(終)