タイヘンダヨー!
俺が通ってた中学って
山の上にあったのね。
長い長い登り坂を
毎日チャリを押して登ってたの。
夏休みだったか、とにかくかなり暑い日に、
部活行く為に一人汗だくで、
いつものようにチャリ押して歩いてたんだよ。
そしたら、後ろからパタパタと
誰か早歩きで来るわけ。
俺、邪魔かなって思って、
追い越させようと道の端に寄ったのな。
足音がだんだんと俺に近づいて来て、
追い越すかなって時に
ピタッと足音が止んだんだよ。
あれ?と思って横目で見ると、
学ラン着た奴が立ってる、真夏に。
誰だよっと思って、
横目のまま顔を見ようとするけど、
なぜか顔は見えないようになってる。
何だよ!ってイラついて、
パッと横向いたら誰もいなかった。
おかしいなって呆然としてると、
後ろから、
「ア゛ータイヘンダヨー、タイヘンダヨー!
ヨーヘイ!ワタシタイヘンダヨー!」と、
英語教えに来てた外人さんが、
叫びながら全力疾走で俺に向かって来た。
外人先生はかなりてんぱっていて、
「キエタヨー!ミナカッタ?!タイヘンダヨー!」
をずっと繰り返してる。
俺は「はあ・・・まあ、幽霊じゃないすかねえ・・・。
大丈夫ですから落ち着いて」と、
暫く外人先生をなだめてた。
もう、あれから10年近く経つけど、
夏が近づくと思い出して笑ってしまう。
(終)