ふくらはぎにある不思議な古傷
僕が小学校に入る、
ちょっと前の頃だったと思う。
いとこの母方の田舎へ
キャンプに連れて行ってくれるという話で、
仲も良かったし、
喜んでついて行くことになった。
僕と従兄妹2人に、
おじさんおばさんって感じで。
キャンプと言っても、
そんなに本格的ではなくてさ。
バンガローみたいなのがあって、
その周りで飯ごうでご飯を炊いて、
釣った魚で食事をしたり。
世間は夏休みだったので、
他にもぽつりぽつりと人は見かけた。
遠目だったけど。
山の中に入って遊んでいて、
かくれんぼをしていたら迷っちゃって。
奥の方に行っちゃったらしく、
帰り道が分からなくなったんだ。
暗くなってきたので怖くなって、
思わず走って帰ろうとしたら転んじまった。
木の根っこでふくらはぎを
でっかく切ってしまって、
血がダラダラ流れて泣いてた。
そうしたら、
何だか泣き声を聞いたのか、
お爺さんが来てくれたんだ。
手に何か籠みたいなものを
持っていたようなのだけ覚えている。
「ぼんず(坊主)、
ここ切ってまったのか。
ちっと待ってろ」
そう言って草むらに入っていって、
すぐに戻ってきた。
手には凄い色したカエルみたいな生き物を、
わしづかみしてた。
突然そのカエルみたいな何かを
地面に思いっきり叩き付けて、
潰れたそれから色んなものが飛び散った。
僕の顔にもかかった。
そしたら何だか緑色っぽいのをすくって、
足の傷口めがけて投げつけて来た。
訳わからないけど、
すごいピッタリと足の傷口を
ふさぐ感じで覆い被さって、
痛みとかそういうのが
消えてなくなった感じがした。
「ようし、寝っぺかな」
そのお爺さん突然、
山道で横になって寝始めた。
何かぶつぶつと、
お経だか呪文みたいなのを
唱えていたけれど、
すぐに寝息になった。
何があったのか分からなくて、
俺はずっと固まっていた。
そのうちに意識が薄れた。
気が付いたら朝で、
足の傷は何故か治っていた。
傷口の痕は残っている。
昨日はあれだけ迷った山道も、
何故かすぐ分かって帰れた。
いとこの家に帰り着いた僕は、
一晩居なかったのに、
何事も無いように・・・
当たり前のように・・・
「おはよう~」
とみんなに返されて、
不思議な気分でいっぱいだった。
それから3日くらい居たけれど、
探しても探しても、
その迷い込んだ山が分からないまま、
自分の家に帰ってきた。
最近、何故か傷痕がやたら疼いて、
たまにうっすらと血が滲む。
血が滲んだあたりを軽く拭くと、
流れ出た形跡が全く無いんだ。
傷口が開いたとかじゃなくて。
近いうちにあの時キャンプで行った所へ、
行ってみなきゃいけない気がしている・・・
(終)