町で一番の高さだったマンションにて 1/2
小学4年の頃の話。
当時、
俺は仲良しグループの中で、
楽しく遊んでいた。
仲良しグループとは、
俺、俺の親友の和也、
知美、理恵の4人のこと。(仮名)
この4人は小2~3と
続けて同じクラスになり、
席も何度か近くなったりして
自然と仲良くなった。
小4の時に和也と知美とは
クラスが離れてしまったが、
それでも放課後に廊下で待ち合わせして、
皆でよく遊んでいた。
その夏の暑い日、
いつものように放課後は廊下に集まって、
今日は何して遊ぶかを話し合っていた。
少しして、
和也が窓の向こうを指差して、
こう言った。
「あの高いマンション行ってみない?
まだ行ったことないよね?」
そのマンションは15階建て。
ここらの町の中では、
一番高さのあるマンションだ。
当時のここらのマンションは
住民以外でも自由に出入りでき、
よくこのグループで近くの
色んなマンションに行っていた。
だけど、
あの高いマンションは少し遠く、
友達も誰一人として住んでいなかったので
何か近寄り難い感じだった。
すると、
理恵が言った。
「あそこはダメだよ・・・」
意味深に言ったものだから、
和也は「何で?」と勢いよく返した。
「よくわからないけど・・・
親からあそこだけは行っちゃダメ
って言われたことある」
そう理恵は言った。
俺は『何が』ダメなのか気になり、
「何だよそれ、行ってみようよ!
気になるじゃん」
と言って、
全体を行く雰囲気に促した。
すると理恵は、
「んじゃ、うちはイイや・・・
ごめんね・・・」
と言って先に帰った。
知美は理恵が帰ったことを
少々気にしていて、
行ってみたい的なことも
言っていたが気を遣い、
結局は和也と二人で行くことにした。
そのマンションまでは、
3キロぐらいあっただろうか。
少し遠く、
着いた頃には少々足がくたびれていた。
この日は雨上がりの晴天で、
アスファルトと雨水が混じった、
変な臭いが辺りを包み込んでいた。
いつもマンションを探検する時は、
エレベーターを使わず
階段で一番上まで上がり、
下にも階段で降りていたが、
この日は疲れていたので、
上へはエレベーターで行き、
上から階段を降りながら探検しよう
という事になった。
しかし、
和也が疲れたから休もう
と言い出したので、
エレベーターホールにあるベンチで、
探検の前に一休みすることにした。
10分ぐらい学校の話など色々していたら、
二つあるうち片方のエレベーターが
1階へ降りてきた。
目の前のエレベーターが開いたが、
誰も出て来なかった。
あれ?と思って、
俺が中を覗きに行ったら、
真っ赤な女物の靴が、
エレベーターの中に揃えて置いてあった。
人は誰も乗っていない。
俺は和也を呼び、
その赤い靴を見せようとしたが、
二人で再度エレベーターを覗くと、
その赤い靴は消えていた。
『あれ・・・さっきはあったのに・・・』
少し奇妙に思いながらも、
二人でそのエレベーターで上った。