町で一番の高さだったマンションにて 2/2

エレベーター

 

このエレベーターの停止階は、

1、3、5、8、11、14階のみで、

 

停止階以外の階へ行く時は、

最寄りの階から階段を使うようになっている。

 

「あれ、14階しかないのか?」

 

俺がそう言ったら和也が教えてくれて、

14のボタンを押して着くのを待った。

 

5階の停止階を過ぎる時だった。

 

通り過ぎる一瞬、

 

視線の先にさっきの赤い靴が

置いてあるのが見えた。

 

俺が「あ!さっきの・・・」と言った時には、

5階を完全に通り過ぎていた。

 

和也が「何?」と聞き、俺は、

 

「さっき1階で見たはずの赤い靴が

5階にあったんだ!」

 

と言ったが、

 

和也は俺が何を言っているのか

わからない様子で、

 

信じないというよりは、

どうでもいいという反応だった。

 

俺は何か気掛かりになって、

8のボタンを押した。

 

5階のエレベーターホールまで降りて、

確かめようと思ったのだ。

 

俺は和也に、

 

「先に上へ行って待ってて」

 

と言い、

8階で降りた。

 

8階のエレベーターホールには何も無く、

 

俺はそこから7、6・・・と、

階段で降りていった。

 

そして、5階。

 

周りをいくら見渡しても、

あの赤い靴は無かった。

 

さっきのは何だったんだろう・・・

と思いながら、

 

5階からエレベーターを呼んだ。

 

もう片方のエレベーターは

14を表示していて、

 

和也はもう着いたんだなと思い、

急いで向かおうとした。

 

そしてエレベーターが5階に着き、

ドアが開いた。

 

俺は一瞬「うわっ!」と、

声をあげてしまった。

 

あの真っ赤な靴が、

揃えて置いてあったのだ。

 

全体が奇妙に赤く、

テカテカと光っている。

 

人は乗っていない。

 

俺は何か、

 

そのエレベーターで上がるのが

怖くなった。

 

しかし、

上では和也が待っている。

 

俺は仕方なく階段を駆け足で

15階まで上ることにした。

 

何か俺は焦っていた。

 

早く和也に会いたい、という、

妙な孤独感に襲われていた。

 

そして15階に着いた。

 

しかし、

 

15階のどこを探しても、

和也はいない。

 

もしかして俺が遅すぎるのに腹を立てて、

先に下へ降りたのか。

 

俺は寂しくなり、

和也の名前を大声で叫んだ。

 

「和也~!どこだ~!」

 

マンション中に俺の声がこだまする。

 

近くにいるなら聞こえるはずだ。

 

しかし返事が無い。

 

もっと下にいるのか。

 

はたまた、声が聞こえていながら

無視しているのか。

 

俺の精神状態は、

だんだんおかしくなっていった。

 

不気味な光景を、

立て続けに見た恐怖感。

 

それを和也に伝えられないで、

一人で彷徨う孤独感。

 

俺は一刻も早く和也に会いたい、

このマンションから抜け出したいと思い、

 

15階から1階までエレベーターで降り、

マンションの外で和也を待つ事にした。

 

14階に降りてエレベーターを呼び、

一人で乗る。

 

今度は赤い靴は無く、

何かホッとした。

 

そして1のボタンを押し、

 

早く着いてくれと思いながら、

目を瞑って待っていた。

 

俺は怖くて仕方なかった。

 

目を瞑りながら、

 

鏡やエレベーターの向こうを

見ようとしなかった。

 

そして、

エレベーターが止まった。

 

ドアが開いたが、

俺は怖さで顔を上げようとしなかった。

 

すると、

大人の男の声がした。

 

『子供一人発見しました。

小学生のようです』

 

『え・・・?』

 

顔を上げると警察官が二人、

俺を見下ろしていた。

 

一人は無線で会話していた。

 

そして、

もう一人が俺に話しかけてきた。

 

「どうしたんだ?

何でこんな所にいるんだ?」

 

俺は訳がわからなかったが、

 

安堵感からその警察官に思い切り

抱きつき号泣した。

 

そして俺は、

その場で警察官に色々聞かれた。

 

そこで、

 

「他にも和也と一緒にいた」

 

と言ったら、

 

その警察官の顔が、

一気に青ざめたようだった。

 

後日、

 

和也は15階から飛び降りて

即死したと聞いた。

 

警察官はその件で住民から通報を受け、

このマンションに来たらしい。

 

何故飛び降りたのかは不明。

 

防犯カメラには俺と和也の姿しか無く、

 

俺は警察官から色々と

尋問みたいなのをされたが、

 

結局この一件は、

事故として処理された。

 

ただ、

俺は確かに見た。

 

奇妙に揃えて置いてあった

女物の赤い靴を3回も・・・。

 

本当にただの事故だったのだろうか。

 

(終)

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