隣の盲学校から聞こえてきた不気味な合唱

音符

 

僕が幼稚園に入る前のこと。

 

僕は一軒家に住んでいて、

その隣が盲学校だった。

 

その頃は何の学校かは

分からなかったのだけれど、

 

その学校からはいつも、

 

あの名曲『川の流れのように』

の合唱が聞こえてくる。

 

ある夕方、

また例の合唱が流れてきた。

 

この『川の流れのように』という曲は、

 

合唱で聴くと寂しげで、

少し不気味だった。

 

幼い僕は、

多くの子どもが感覚が強いように、

 

その不気味さを今までは感じることが

出来ないほどに強く感じた。

 

嫌な感じになった僕は、

家に帰ったが誰もいなかった。

 

寂しい夕日が静かに部屋へ

入っているだけで、

 

やっぱり誰もいない。

 

怖くなった僕は、

隣の友達の家に行った。

 

なんとなく、

呼び鈴も押さないでドアを押した。

 

静かにドアは開いた。

 

夕日が静かに玄関を照らし、

僕の影だけが床に映る。

 

人のいる気配はしない・・・

 

幼い僕にはわけが分からない。

 

誰もいない。

 

でも不気味な『川の流れのように』が

流れている。

 

まるで、

地獄から聞こえてくるような・・・

 

もはや『川の流れのように』ではない。

 

どんどん声が低くなっていく・・・

 

声が捻れていく・・・

 

気持ち悪い音が耳の中に響く。

 

もう理解不能になった僕は、

友達の家で気絶していたらしい。

 

今思えば、

あれはなんだったのか・・・

 

大人になった今でも、

妙に頭に残り続けている。

 

『知らず~知らず~歩い~て来た~

細く~長い~この道~』

 

(終)

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