受験に失敗する子の机には

学校の机

 

これは、私が学生の頃の体験した話。

 

自分で言うのも何だが、私は子供の頃から大人しい性格だ。

 

外でドッチボールをして遊ぶよりは、図書室で本を読むことが好きだった。

 

将来の夢は特になかったが、科学者になったら面白そうだな、とは思っていた。

 

小学生の時は同年代の友達から浮いているという自覚はあったが、これが自分だから仕方がない。

 

そんな私には、幸いにも保育園から付き合いがある親友がいて、クラスでも中心的な存在だった。

 

私が小学校で馴染めなくても意地悪されることがなかったのは、この親友のおかげだと今では思っている。

 

小学校も高学年になると、中学受験の話題が出るようになってきた。

 

私たちの学区内には私立の中高一貫校があり、親の方針でそこを目指す人も多い。

 

子供からすれば、学校のブランドよりも仲の良い友達がどこへ行くか、で選んでいるのだが…。

 

私は良い環境で勉強がしたかったので、結果的にはブランド中学校を選んだが、親友も偶然そちらを選択していた。

 

その頃、学校で変な噂が流れた。

 

それは、「受験に失敗する子の机には、どこかに『不合格』という文字が書かれている」というものだった。

 

過去に受験で失敗した子の呪いだとか言われていたが、実際に誰も見たことはなかった。

 

しかし親たちの間でもずいぶん話題となっていたようで、たまに母から「今日は誰かの机に書かれてなかった?」などと質問されるほどの有様だった。

 

学校でも、数日おきに皆の机をチェックする者が現れたりと、噂は加熱する一方だった。

 

「おい!お前の机にあったぞ!」

 

ある日、私の机をチェックした人が声を上げた。

 

確認してみると、私の机の裏側に『不合格』とマジックで書かれていた。

 

正直なところ、そんな噂を全く信じていなかった私ではあったが、いざ自分に降りかかると気味が悪い。

 

とりあえずの対処として、不合格の文字を黒ペンで塗り潰しておいた。

 

それから一週間後のこと。

 

今度は私の机の表面に、とても大きく『不合格』という文字が書かれていた。

 

その文字は親友がすぐに消してくれたものの、翌日にはその親友の机に『不合格』という文字が書かれていた

 

それ以降、不合格の文字は毎日誰かの机に書かれるようになり、大騒ぎとなった。

 

クラスの雰囲気はだんだんと悪くなり、その矛先は私へ向いているようだった。

 

それもそうだ。

 

私の机から始まり、次は私と繋がりがある親友の机。

 

親友は皆と仲良しだから、そこからは一気に広がるだろう。

 

私がクラスから浮いていたことも拍車をかけた。

 

もちろん私が悪いわけではないが、居づらくなった為、しばらく登校を控えた。

 

そんな事態で親や先生は心配してくれたが、私としては家でも勉強できるし、むしろ集中できる環境だ。

 

結果的に噂の効果はなかったようで、私はブランド中学校に合格した。

 

中学校は環境が私に合っていたのか、一番楽しい時代で友達も多くできた。

 

ただ、事実かはわからないが、こんな話を聞いた。

 

私の机へ不合格と書いたのは、保育園から仲良しだった”あの親友だった”と。

 

噂を作ったのも親友で、皆の机に不合格と書いたのも親友。

 

全てその親友が仕組んだものだったと。

 

その親友は成績が悪いわけではなかったが、ブランド中学校の受験に失敗して、他の学校へ進学していた。

 

中学校に行ってからは親たちも疎遠になったようなので、彼がどういった気持ちでそんなことをしていたのか、今となっては聞いてみる機会もない。

 

人間は怖いなと思う反面、これら全ての仕掛け人が親友だったというのは本当に真実なのだろうか、とも思っている

 

(終)

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