彼女と電話中に聞こえてきた背後の声
大学時代にあった話。
その夜、彼女と電話で話していた。
話の内容は、会ったこともない彼女の友達の話や、興味のない携帯小説の話。
しかも長い。
時間が経つにつれ、だんだんと彼女の話に集中できなくなってきた。
すると、彼女の声に混じって、背後でゴニョゴニョと話し声が聞こえるのに気づいた。
遠くて声の性別は分からない。
こもっていて抑揚のない感じ。
家には一人だと聞いていたので、テレビでもつけているんだと思って特に気にしていなかったが、彼女の話が余りにもつまらないので、なんとなくそのゴニョゴニョ声に耳を傾けていた。
しばらくして、その背後の声が少しずつ大きくなっているのに気づいた。
相変わらず酷くこもっていて性別は分からない。
高い男声か低い女声という感じ。
何を言っているのかは分からないが、かなりの早口でずっと喋っている。
テレビ番組にしてはちょっと不自然だと思い、自分の部屋のテレビをつけてチャンネルを回してみたが、当然そんな番組はやっていない。
チャンネルを回しているうちに、今度は彼女が全く喋っていないことに気づいた。
そして、あのゴニョゴニョ声も聞こえない。
「ヤバイ、話を聞いてなかったのがバレて怒らせちゃったか・・・」と思い、どう切り出そうかと考えていると、低い唸るような男の声で「おい」と聞こえた。
驚いて、とっさに電話を切った。
それ以来、彼女とは連絡がつかず、大学にも来なくなった。
電話から一週間後に彼女のアパートにも行ったが、部屋は解約されて空家になっていた。
SNSのログインも無し。
共通の友達に聞いても分からず。
もう4年になる。
(終)