新宿駅のプラットホームでの怪奇
これは、新宿駅の中央線プラットホームで電車を待っていた時の話。
突然、後ろから肩を叩かれて振り返ると、30代くらいのサラリーマンが立っていた。
しかし、目が合ってもその男は黙っているので「何ですか?」と聞くと、「何で知ってるの?」て答えた。
意味が分からず薄気味悪いので、私は移動して電車を待っていると、また後ろ肩を叩かれた。
キレた私はその男を睨んで無視していると、「何で知ってるの?」とまたその男が言う。
男の顔は蒼白で、明らかに様子が変だった。
ヤバいと思った私は、待っていた電車がようやく到着したので急いで乗り込んだ。
すると、逃げたはずなのにその男も一緒に乗り込んできて、今度は目の前で顔を摺り寄せながら「何で知ってるの?」と言う。
私は一気に鳥肌が立った。
そして大声を出してやろうと思った瞬間、その男は目の前から消えた。
私は動転していて、現実か幻かよく分からなかった。
しかし、しばらくその男の姿が目に焼きついてしまい、自宅の最寄駅で降りるまで吐きそうなほど気分が悪くなった。
今でもあれが現実だったのか分からないけれど、中央線はサラリーマンの投身自殺が多く、『よく出る』ということを後で聞いた。
「何で知ってるの?」という声は、生きている人間への霊の呻(うめ)きだったのか。
私が何を知っているというのだろう?
さっぱり何も分からない出来事だった。
(終)