自転車の荷台に乗っていた妹が消えた！？

これは、父が若かった頃の話です。

山間の集落で起きた出来事なので、もしかすると山の怪と何か関係があるのかもしれません。

ある日のこと、父と同じ集落に住む若者の一人が、妹を連れて自転車で親戚の家へ行きました。

彼らは日が沈んでから家路に着きましたが、その途中に若者が何か違和感を覚え、後ろを振り返りました。

すると、自転車の荷台に乗っているはずの妹が姿を消していたそうです。

人外の者に隠された！？

若者は妹が自転車から落ちてしまったと思い、慌てて道を引き返しました。

しかし、通って来た道の何処にも、妹の姿はありませんでした。

“女の子が夜中にいなくなった”ということで、すぐさま集落の男衆が集められ、捜索が開始されました。

父の記憶によると、かがり火をいくつも焚いた大捜索だったそうです。

ただ何故か皆、いなくなった女の子の兄が自転車で通った道『以外』の場所を、隈なく捜しまわっていました。

その甲斐あって、女の子は無事に発見されました。

ですが、不思議なことに女の子は、親戚の家から自宅までの（一本道と言って差し支えない道のり）とは全く方向を異にする、田んぼの中にうずくまっていたのです。

女の子が発見された時、その横にはウリの実の皮が落ちていました。

ウリは、人でも獣でもない者が食べたとしか言いようのない、溶かされた、或いは舐め尽くされたような状態で落ちていました。

それを見た人々の間に、「ああ、やっぱり･･･」というような空気が流れたそうです。

父は、「自分も含めて皆、最初から女の子は人外の者に隠されたと半ば以上確信していた」と、当時を振り返っていました。

盛大にかがり火を焚き、女の子がいるはずのないような場所まで捜しに行ったのは、そういう訳なのだと･･･。

（終）