帰宅すると奇妙な事が起きていた
これは、俺が高校生だった頃の奇妙な体験話。
雨降りの夕方、俺は学校から家に帰ってきた。
すると、母がバタバタと何やら仕度していた。
そして、「あんた、何やってたの!叔父さんが亡くなったのよ。早くしなさい」と言う。
俺は、(え?どこの叔父さん?)と思いながらも、とりあえず用意しようとしたら家の電話が鳴った。
俺と母の話がかみ合わない
母は忙しくしていたので俺が受話器を取る。
「もしもし、俺だ!落ち着いて聞け。いいか?」
かなり切羽詰った口ぶりで、相手はいきなり喋りだした。
(ん?誰だろう?)
叔父さんが亡くなったことを自分で知らせるには変だし、何か聞いたことある声のような・・・。
「死んだのは母ちゃんだ。絶対に振り向くな。そのままじっとしてろ」
(ああ・・・兄だ)
それは去年バイク事故で亡くなった兄の声だった。
少し体を動かしてみようとは思ったが、硬直して動かなかった。
(どうなっているんだ?)
さっきまで母がバタバタと忙しくしていたのに、今は背後が静まり返って全く音がしない。
「何やってるの。早く死になさい」
突然、耳元で母の声が聞こえ、そこで記憶が途切れた。
しばらくして、仕事から帰ってきた母に起こされた。
受話器を持ったまま倒れ込むように寝ている俺を見て、母は心臓が止まるかと思うほど驚いたらしい。
聞けば、玄関にある電話のところで、俺は受話器を持ったまま寝ていた。
しかしそこから、俺と母の話がかみ合わない。
母に死んだ叔父さんのことを聞いても、そんな話は知らないと言う。
今まで何処に居たのかと聞けば、今仕事から帰ってきたところで昼間は家には居なかったと言う。
そういえば、さっきは家の中も変だった。
母が忙しそうにしていたので聞かなかったが、リビングの真ん中に長い髪の毛のようなものが山盛りで散乱していた。
あれは一体何だったんだろう。
そして、あの母は一体誰だったんだろう、と今は思う。
(終)