一体、助手席には何が居たのだろうか
これは、知人に聞いた話。
山中を車で走っている最中、不意に何かが道を横切ったので急ブレーキを踏んだ。
「今の見たか!?」
ひどく興奮して助手席の方に話しかけた。
・・・が、そこには誰もいない。
そもそも、誰かを車に乗せた記憶がない。
灰皿には吸いかけの煙草があった。
知人には車内で煙草を吸う習慣などない。
では一体、助手席に何がいたのだろうか?
~以下、「あとがき」と「考察」に続く~
あとがき
知人曰く、この日は家に帰り着くのが1時間以上遅れたそうで。
そんなに長い時間、停車していた覚えもないらしい。
それに、ブレーキを踏む前に「何を見たのか?」も、記憶から抜け落ちている。
考察
ぱっと考えられるのは以下の3つだろうか。
1つ目は、隣にいたのは“幽霊”、もしくは人に暗示をかけられる“化生”(化け物や妖怪)の類い。
幽霊の場合は、とり憑かれていたか、とり憑かれている。
化生の場合は、からかわれていた可能性が高いが、そうでないのなら喰らわれる直前だったかもしれない。
2つ目は、隣にはもともと知人がいたが、何者かによって“神隠し”された。
そして隠されたことによって、存在が元から無かったことにされた。
3つ目は、強い力を持った何者かが、“体験者を己の領域に引きずり込もうとしていた”。
つまりは神隠しされるところだった。
(終)