2泊3日の登山での奇妙な体験談
これは、よく一緒に登山をする友人の体験談。
その友人は、とある雪山を5人パーティーの2泊3日で攻略しようとしていた。
1泊目の夜、雪原に張ったテントの中で寝ていると、外から声が聞こえたという。
よく聞くと、「おーい、おーい」という声が下山方面、つまり今まで登って来た方から聞こえてくる。
腕時計を見ると、深夜2時をまわっていた。
遭難者でもいるのか?とパーティー全員を起こし、みんなでランプを持って遠くから聞こえる声に近付きながら呼びかけてみた。
「おーい、大丈夫ですかー!」
「誰かいますかー!」
しかし、こちらが大声でそう呼びかけた瞬間から、ぱったりと声は聞こえなくなったという。
2日目、いくつかの峰を越えて、明日は頂上を目指せるという場所でまたテントを張った。
その夜、寝ていた友人は小便をしたくなったので、用を足しにテントの外へ出た。
真っ暗な雪原の中、一人で用を足していると、頂上の方向に何か気配がした。
目を凝らしてみると、何かランプの光のようなものが遠くでゆらゆらとしている。
友人は呼びかけてみた。
「おーい」
すると、光が消え、その方向から声だけが聞こえてきた。
「おーい、大丈夫ですかー!」
「誰かいますかー!」
紛れもなく、昨日の自分たちが発した声だった。
急いでテントに戻った友人は、寝袋に入って震えながら夜を過ごしたという。
その後は何事もなく登頂に成功し、無事に帰って来た。
(終)