自殺者が出たという廃墟マンションにて
これは、従兄弟から聞いた話。
うちの近くには地域でわりと有名な心霊スポットがいくつかあり、その中に『過去に自殺者が出た』というマンションがある。
過疎化が進んでいる影響なのか、今では誰も住んでいなくて廃墟になっているが、従兄弟が友達とそこへ行ってきたそうだ。
その自殺者が出たという部屋は1階にあるらしいのだが、どの部屋かわからないまま行ったという。
中に入ると、並んでいるドアのほとんどに鍵が掛かっているのか、開かない。
ただ、一ヶ所だけ鍵が掛かっていない部屋があり、一通り回った後にビクビクしながらそのドアを開けてみた。
だが、特に何もないし、何も起きない。
従兄弟たちは拍子抜けして、帰路に着くことにした。
そしてマンションを出てすぐ、ヤンキーの集団とすれ違った。
「あいつらも肝試しかな?」なんて言っていると、マンションの方から女のような高い声の悲鳴が聞こえてきた。
「あれ?さっきすれ違った中に女の子いたっけ?」と言いつつも、車に乗り込んで近くのコンビニへ。
しばらくコンビニで談笑していると、さっきすれ違ったヤンキー達もコンビニにやって来た。
・・・あれ?女の子がいない。
何気なく「そっちに女の子いなかった?」と聞いてみると、「最初からいないっすよ?」との返事。
変だなと思いつつも、同じ場所に行った親近感からか、なんとなくヤンキー達と話が盛り上がり、さっきのマンションの話が始まった。
従兄弟たちは、「あのマンション、ひと部屋だけ入れたよね?」とヤンキー達に聞いてみた。
「は?」
「だから、ひと部屋だけ開いてたでしょ?中に入らなかったの?」
「いや、入ったけど・・・」
顔を見合わせるヤンキー達。
「俺ら入った時は、ひと部屋だけ開かなかったんすよ。後は全部開いてたし」
従兄弟たちはそれを聞いて鳥肌が立ったそうだ。
(終)