3メートルの巨人と複数のナメクジ人間
これは、田舎に住んでいた子供の頃の怪異体験話。
ある日のこと、地元から一つ向こうの山で遊んでいると、いつの間にか迷っていた。
泣きたい気持ちを堪えながら闇雲に歩いていると人の声がする。
安心してそちらに行ってみたら、『変なモノ』がいた。
ガリガリに痩せた3メートルぐらいある、やたらとでかい人間のようなモノ。
ソレが、ナメクジみたいな体に人間の顔が埋まったような複数の生物に、鎖を繋いで歩いていた。
ソレはすぐにこちらに気付き、近づいて来た。
僕がガクガク震えていると、腰をヌッと落として顔を近付け、「この事一切他言無用」と言った。
目が異様に小さかったのを覚えている。
僕は「道に迷ったの…」と何とか口にすると、ソレはしばらく考えた後、「ここをこう行け」と教えてくれた。
その時、後ろのナメクジ人間が皆、口々に叫んだ。
「助けてください!」
「君、人間だろ!」
「助けて!」
「こんなの嫌!」
みんな泣いているようだった。
当然、僕にはどうしようもなく、半泣きで固まっていた。
すると、ソレはまた鎖をグッと持って、彼らを引っ張りながら森の奥へ消えて行った。
助けを乞う声は、ずっとしていた。
そしてソレの背中が見えなくなった後、僕は変な声で叫びながらも教えてもらった道を無我夢中で走った。
あれだけ迷ったのに簡単に家に着いたのだから、ソレは悪い奴ではなかったような気もする。
だが、ソレが物の怪の類だったのは間違いないとしても、あのナメクジ人間たちが何だったのかがよくわからない。
(終)