深い闇と静寂の中で近づいてくる音

テント

 

これは、山での不思議な体験談。

 

2018年8月15日に、NHKのBSで放送された『異界百名山』という番組がある。

 

山で起こった不思議な体験談を体験者自身が語るという番組なのだが、これと似たような話を山好きの友人から聞いたことがある。

 

NHK番組の体験者の話をかいつまんで説明すると、その人は山道を補修する仕事に従事しており、ある日に仲間数人と山小屋で1泊することになった。

 

山小屋の扉は重かったが、ようやっと開けて中で寝ていると、夜も更けてから「ドスンドスン」と地面を叩く音と鈴の音が外から聞こえてきたそうだ

 

その音は、どんどん山小屋に近づいてくる。

 

やがて山小屋の扉の前までその音がきたかと思うと、すっと扉が開けられ、山小屋の中を「ドスンドスン」と地面を叩きながら歩き回るのがわかった。

 

怖くてどうしようもなく、皆でお経を唱えながら目を閉じてじっとしていたが、しばらくしてそれは山小屋を出て行ったとか。

 

この体験者いわく、「後から考えればあれは誰かが守ってくれていたんだろうな」と美談のように語っていたが…。

 

私が山好きの友人から聞いた話は、そこから先があった。

 

友人の話はこうだ。

 

一人で山に登り、テントを張って夜中に寝ていると、「ドスッドスッ」と地面を突く音が聞こえてきた

 

人っ子一人いない夜の山、深い闇と静寂の中、その音はどんどんテントに近づいてくる。

 

高い山の中にいると不思議な体験はよくするそうで、すぐに「ああ、人間じゃないな」とわかった友人は、そのままテントの中でじっとしていたそうだ。

 

ドスッドスッドスッ…。

 

音は友人のすぐ側まできた。

 

その時、地面を突いている棒が見えた。

 

「次は顔を突かれる!?」と、とっさに友人は身構えたが、棒は友人の顔も体も逸れてそのまま遠ざかっていった。

 

余談だが、雪崩に巻き込まれて遭難した人を探す時は、一列に並んで雪に棒を突き刺しながら進んでいく。

 

「あれってもしかして…」

 

友人は、そう思ったそうだ。

 

あとがき

つまり、山の”何か”が棒を突き立てて人を探していたのではないだろうか。

 

鈴の音からしても、山伏の霊か天狗あたりか。

 

ただ、遭難者の霊ならまだしも、それを捜索する霊というところに違和感はあるが。

 

錫杖なり六根杖なりを突いて山道を歩く、修行の中途に遭難した行者さんなのかもしれない。

 

本文にもあるが、雪の下の遺体の捜索は、細い棒をとても慎重に刺しながら探す。

 

固い地面に当たるか、柔らかい遺体に当たるか、緊張しながらの作業となる。

 

万が一にも遺体を棒で傷つけたくはないからだ。

 

ちなみに、土の下に遺体が埋まっていないかを捜索する時は、地面に中が空の棒を突き刺して臭いを嗅ぐ。

 

これは遺体の臭いというよりも、遺体から発生したガスの臭いを探す。

 

強烈なので間違えるということはないそうだ。

 

(終)

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