河童の祠を撮ったものを見返してみたら
これは河童の呪いか、はたまた神様の祟りか、そんな奇妙な体験をした話。
我が家では、私が小学生の頃から夏は1週間ほど東北へキャンプに行っている。
小学6年生の夏は岩手県を中心に観光して、途中で遠野に寄った。
そこで凄い体験をしてしまい、その時から“やっぱりこの世には何か不思議なものは実在する”と信じている。
遠野といえば、知る人も多いと思うけれど『河童伝説』で有名。
ただ、当時の私はアホ丸出しだったので、DSのカメラで「絶対に河童を撮るぞー!」と息巻いていた。
この遠野には、『河童の祠』というものがある。
田んぼの中にこんもりと木が生い茂った林があり、さらにその中に川が流れていて、その側に小さな河童の祠がある。
弟にも「絶対に河童の写真を撮るから!」と言った手前、それはもう夢中で川や林をDSのカメラで撮りまくった。
ちなみに、当時はもちろんスマホなんて普及していない。
あらかた河童の像などを撮りまくったけれど、もちろん河童なんて写っていない。
それで、つい撮ってしまった…。
河童の祠の中を。
本当に今思い出しても、馬鹿な行動をしたと思っている。
当時の私は、祠なんてただのモニュメントとしか思っていなくて、観光気分で撮ってしまったと言い訳させてほしい。
そして、「キレイに撮れたかな~」なんて言いながら保存した画面を開いた時に、おかしなことが起きていた。
何も写っていない。
正しく言うなら、DSの画面には“ただ真っ白なもの”が写っていた。
私はDSが壊れてしまったと思い、慌てて父に見せた。
父は本当に壊れたか確認するため、適当に手持ちのペットボトルを撮った。
すると、ちゃんと写っていたので父も不思議がっていた。
どうして祠の写真だけ真っ白なんだろう、と。
疑問を抱きながらじっとその写真を見つめていたら、あることに気づいた。
真っ白に見えた祠の写真には、ちゃんとあるものが写っていた。
それは祠に濃い霧がかかっている感じで、手前に祠の台や河童の像などが写っている。
祠の周りには木が生えているので暗いため、祠が明るく写ることは決してなく、もちろんDSには光を放つフラッシュ機能もなかった。
父にそのことを説明して再度見せたところ、かなり怒られてしまった。
慌ててその写真を消去したのは言うまでもなく…。
その後、祠の林から駐車場までそこそこ歩くので、周りにいた観光客の人たちと林から出た途端、また驚いた。
あれだけ雨が降っていたのに、雲一つない快晴になっている。
周りの人たちもポカーンとなるくらいに。
父に「これは神様の祟りだよ」と言われたけれど、なぜか弟はウキウキしていた。
急に怖くなってしまった私は、帰り際に母にきゅうりを買ってもらい、家の近くの川にきゅうりを3本投げ入れた。
今考えれば、河童の祠の川に投げるべきだったけれど…。
(終)