脳に騙されてはダメだよ
自分の中から死にたいとか、そういう異常な考えが湧いてきても、『これはおかしい。他に道はあるはずだ』と客観視できなくなった人が自殺してしまうのだろう。
私は小学生の頃、ひどい頻尿になってしまったことがある。
家では普通なのだが、外出すると何度も何度もトイレへ行かずにはいられなかった。
行っても出ないが、切羽詰まった感覚は本当に感じるのだ。
ひどい時は、電車に乗っても一駅ごとに降りないといけなかった。
検査しても身体的には何も異常なしという結果で、心理的なものでしょうと言われた。
そこで母に言われたのが、こんな言葉だった。
「あなたの頭の中は今ちょっとゴチャゴチャしていて、おしっこが溜まってなくても溜まってるって信号が間違って出てしまうみたい。もし信号が出てトイレに行きたいなって思っても、行ったばかりだったらそれは間違った信号だから騙されてはダメだよ」
自分の身体(脳)に騙されることってあるのか!?と、なんだか目から鱗が落ちた気分だった。
それ以来、電車でトイレに行きたくなると、母と小声で「また騙されてるよ」と言い合って、症状は少しずつ良くなっていった。
その時の体験が強烈に残っているせいか、自分が変な行動を取った時に、常に『これは脳に騙されていないか?』と考える癖がついた。
PMSでイライラする時も、『これは脳(ホルモン)に騙されているな』と思うと、わりと治まる。
※PMS
月経前症候群のこと。月経の3日から10日位前から起こり、月経開始とともに消失する、一連の身体的および精神的症状を示す症候群(いろいろな症状の集まり)。(Wikipediaより)
この先もしも、自傷や自殺が頭に浮かんだ時にも、同じように『騙されないぞ!』と思えたらいいなと思う。
(終)