成功すればその家が廃れるという呪術
これは、俺が小学生の頃の話。
うちの親父は水道の技術者。
特に夏場は忙しく、どこにも連れて行ってもらえないので、夏休みは親戚の家に10日間くらい泊るのが恒例だった。
ある時、叔父さんに卵とキュウリとトマトを親しくしている家に届けるのを頼まれ、「留守だったら小縁に置いて来ればいいから」ということで出かけた。
マイナーな伝統呪術
叔父さんの家と親しいとはいえ、俺はよく知らない家なので、粘らずに留守と判断して置いて帰ろうとした。
しかしその時、婆さんが大きな鎌を振り上げながら、「お前うちに何の恨みがあるんだ!」と激怒しながら突進してきた。
結局は叔父さんの甥っ子ということで小遣いまで貰ったが、婆さんの言っていたことで唯一覚えていたのが『さんりんぼう』という言葉。
家に帰ってから母親にこの話をすると、「さんりんぼうと間違われたんだよ」と笑っていた。
この土地でいう『さんりんぼう』とは、三隣亡の日にナマモノで儀式をすることのようで、そのナマモノを標的の家の敷地に置き、見つからずにそれが腐るとその家が廃れる、というマイナーな伝統呪術だった。
※三隣亡(さんりんぼう)|参考
三隣亡は少し前までは建築関係者の大凶日とされ、棟上げや土起こしなど建築に関することは一切忌むべき日とされた。 その字面から、この日に建築事を行うと三軒隣まで亡ぼすとされたためである。(Wikipediaより引用)
また、見つかりやそうな所ほど効果が大きいらしい。
そんな呪術がうちの辺でも存在していたようだ。
その後、「あの家はさんりんぼう筋と言われてるんだよ」とか、留守に置いてきた時は電話で「さんりんぼうじゃないよ」と一報を入れることを聞いた。
田舎は犯罪が少なくていいなと思っていたが、こんな薄気味悪い風習がひっそり残っていたり、鎌で殺られていたかもしれないことに恐怖を覚えた。
(終)