精霊流しの当日に私の精霊がなかったが・・・
これは、お盆も過ぎてふと思い出した去年のこと。
地元では毎年お盆になると『精霊流し』をする。
子供たちや地元の人たちで和紙に絵を描いて川に流す。
去年、私はお盆の前に流産してしまっていた。
ずっと塞ぎ込んでいたのだけれど、精霊流しに参加して気持ちが楽になればと、頼まれた和紙にヘタクソながらも頑張って絵の具で絵を描いた。
産んであげられなかった赤子に精一杯の思いを込めて。
私の精霊の行方
そして、精霊は事前に一箇所に集めることになっていたので、私の精霊も一度その場所に持って行き、お盆の当日に一斉に川に流すはずだった。
しかし当日、精霊流しをしようと行くと、私の精霊がなかった。
私は目が悪いので、かなり明るい色を使って、川を流れていく時に見失わないようにとても目立つように柄も書いたのに・・・。
でもまあ誰かが間違えたんだろう、精霊を流してくれていればいいや、と軽く考えていた。
ないものは仕方ないし、いちいち名前を書いていたわけではなかったから。
後日、風の噂である家が大変だと聞いた。
住む場所がかなり離れていても、田舎では悪い噂というのはすぐに広まる。
なんでも、不幸続きで大変だと。
どうやらその家のおばあさんが、どこからか持ってきた精霊流しの灯篭を家に置いてからだと聞いた。
大事に隠すように置いてあったので、家族がその存在に気付いたのは家の状況がかなり悪くなってからだったようだと。
結局、その家は今は引っ越して空き家になっていて、私は親しくなかったので詳しい事情は分からない。
ただ、その灯篭の話を聞くと、どう聞いてもその灯篭は『私が描いたもの』だった。
泣きながら書くほど思いのこもったものだったから、何かがあったのかもしれないと思うけれども、今となっては確かめようもない。
(終)