最上階の部屋なのに上から聞こえる足音
これは10年前、学生の頃に住んでいた杉並区のマンションでの体験話。
当時で築10年くらいだろうか。
俺は最上階の3階に住んでいたが、夜になると時々『上から足音』が聞こえた。(ほとんど夜しか部屋にいなかったので、夜しか聞いていないのだが・・・)
上に誰かいるのか?と思い、見に行こうとしても屋上に通じるドアには鍵がかかっている。
安い家賃には訳があった
マンションの下からは全く見えないので、向かいの5階建てマンションへ行き、自分の住むマンションを見てみた。
しかし、そこには水道タンク等の設備しかない。
結局、足音は頻繁ではなかったのであまり気にしないことにして、猫でもいるのかなと思っていた。
だが、友達が泊まりに来た時に、「この音、絶対に猫じゃねえよ。うちには猫がいるから分かるわ」と言う。
それでも俺は別に気にしなかった。
その後、卒業と同時に引越しが決まった。
引越し作業をしている時に玄関を開けて掃除をしていると、水道業者のおっちゃんが二人ほどいた。
おそらく定期的な点検だろうか。
どうやら屋上に出入りしているようなので、ちょっと覗きに行ってみた。
やはり、屋上には水道タンク等の設備しかなかった。
するとおっちゃんが俺に気付き、「どうしました?」と聞いてきた。
俺は、「いやあ、よく屋上で歩いている音がしていたんで・・・へへへ」と答えた。
直後、おっちゃんの顔色が変わった。
詳しく話を聞いてみると、すぐ隣のマンションの最上階に住んでいる大家の息子さんは、知的障害があって隔離されていたそうだ。
そして、このマンションの屋上に小屋みたいなプレハブを建てて、そこに住んでいたという。
そのプレハブの設置も、その業者さんがやったそうだ。
しかし息子さんは10年ほど前に、マンションのすぐ近くをうろついていて事故死してしまった。
その後、そのプレハブは撤去したという。
どうりで2DKなのに6万5千円の家賃は安いと思った。
特に何もなかったので良かったが。
(終)