廃材を組み合わせて作ったコワモテ様

祠

 

それは10年以上も前、ちょうど俺たちが小学3年生の時の話。

 

当時に通っていた学校では、こっくりさんや口裂け女などのオカルト話が大流行していた。

 

そうなると、その場で新たに怖い話を作るヤツが当然のようにいる。

 

俺もその一人で、友達二人と共に「俺たちは邪神を作ろう」と計画した。

 

それは「邪神を作った○○スゲー!」みたいに、クラスの人気者になりたいが為に立てた浅はかなもの。

 

出来た邪神も、空き地に落ちていた割れたボールや洗濯バサミなどの廃材を組み合わせただけというものだった。

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奇妙な偶然

子供目に見ても邪神というにはお粗末なそれを、少しでもそれっぽく見せるために俺たちは学校の裏山にプラスチックの箱で祠を作り、パンの耳や蜜柑(みかん)を供物として捧げた。

 

また供物はタマネギの皮だった時もあった。

 

そして邪神完成から数日後のこと。

 

神霊について調べた友達が、依り代に名前を決めようと言い出した。

 

依り代(よりしろ)

依り代、依代、憑り代、憑代(よりしろ)とは、神霊が依り憑く(よりつく)対象物のことで、神体などを指すほか、神域を指すこともある。(Wikipediaより引用)

 

邪神様と呼ぶのに飽きていた俺たちはそれに賛成し、邪神の名を『コワモテ様』とした。

 

ちなみに名前の由来は、某RPGのカカシに何となく似ていたからで、依り代の下らない計画同様、朽ちかけの木の板に墨で乱雑にコワモテ様と書いたものだった。

 

邪神がコワモテ様へと転生し、半月が経とうとしていた夏の終わりにそれは起きた。

 

学校帰りに供物のパンと蜜柑の皮を捧げた俺たちは、大物が釣れると噂の防波堤へ釣りに行こうと計画した。

 

餌も買い、竿も親から借り、天気は晴れ。

 

「さぁ休日よ来い!」と勇んだ当日、俺は何の前触れもなく高熱に襲われた。

 

当然釣りに行けるはずもなく、翌日に友達に来れなかったことを電話で謝罪したところ、友達も高熱に襲われていたらしい。

 

「奇妙な偶然もあるもんだな」と話していると、その日の夕食時に親から「防波堤で死体が見つかった」と知らせられた。

 

自殺か他殺かは分からないが、とにかく酷い有様だったらしい。

 

「もし高熱に襲われなかったら・・・」という、薄ら寒いものを感じながら休日を過ごした。

 

休み明け、怖さを少し引きずったまま学校へ行ったその帰り道のこと、「供物を捧げなかったからコワモテ様は怒ってるかな?」と話しながら友達らと祠へ行くと、コワモテ様はいなくなっていた。

 

いや正確に言えば、コワモテ様を構成していた廃材は近くに散らばっていた。

 

ただ、依り代の名を書いた朽木は無くなっていた。

 

コワモテ様が死んだと思った俺たちは、穴を掘ってコワモテ様と祠を埋め、上に石を乗せて墓を作った。

 

依り代は朽ちかけだったので崩れただけかもしれないが、今でも俺は「コワモテ様が助けてくれた」と信じている。

 

(終)

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