逃げている理由
修学旅行で肝試しが行われた。
メンバーは男子2人女子2人の計4人。
全てはクジで行われた。
クラスの人数は27人。
一つのグループが3人となってしまう計算
だったが、俺のグループは4人だった。
メンバーは、仲の良い高野に、
少し気になる女子の合川さん、そして
クラスで浮いてる女子の天野だった。
肝試しの場所は本物の墓地。
本物の霊を見てもおかしくもない場所。
俺たちは順番待ちをしている時も
ドキドキしていた。
そして 、ついに順番がやって来た。
元々怖いものが苦手な俺は、
先頭を高野に任し、
高野の後ろに俺と合川さん、
俺の後ろに天野がいた。
しばらく歩いていると墓地が見えた。
「ここに入るのかよ~」
と俺たちは足を止めた。
墓地にはかなり気味の悪い霧が立ち、
静寂に包まれた森の中にあった。
意を決して、みんなで足を進める。
墓地の中に入った。
こんな場所に仕掛け人がいるのかよ、
と思うくらい怖かった。
が、進んでいると明らかに笑いを狙ったような
霊や、変装した先生が出てきた。
怖いと言うよりも面白かったので、
気が付いた頃には緊張感も和らぎ、
墓地の中も少しは慣れてきた。
しばらくすると、ようやく墓地の出口が
見えてきた。
「あんまり怖くなかったな~」
と笑いながら言うと、俺の顔を見た
高野は突然、
「うぁぁぁああああ!!!」
俺たちを置いて、叫びながら
一人で逃げる。
俺たちは訳も分からずに、
高野の後を追う。
ここで走りながら後ろを見たのか、
合川さんが俺に「やばい!後ろっ」。
それを聞いた俺と天野は、
反射的に後ろを見た。
一瞬しか振り返ってないので『それ』を
確認することが出来なかった。
ひたすら走っていると、ゴール付近で息を
切らしてしゃがみ込んでいる高野が見えた。
高野の周りには、既にゴールしたクラスメイトが
高野の周りに集まっていた。
俺たちが「お~い!」と手を振ると、
高野もその場にいたクラスメイトも
悲鳴を上げ、逃げ出した。
何で逃げるんだよ!
そう口にしたかった俺だが、
疲れに圧倒され声が出なかった。
足を止めて休憩しようにも、
後ろから迫ってくる『それ』が怖く、
俺と合川さんと天野は、
息を切らしながらも必死に逃げる。
訳も分からない道を走っていると、
俺たちの宿舎が見えてきた。
先に逃げるみんなが宿舎の中に入る。
宿舎の入り口のドアを高野が閉めようとする。
「待って!待ってよ!」
泣きながら合川が叫ぶ。
「早くしろ!やばい!」
高野が今にも閉めようとする体勢で、
俺たちに叫ぶ。
何とか俺たちは宿舎の中へ入った。
急いでドアを閉める高野。
その場にいたみんながホッとした。
ここで俺は高野に問う。
「何で逃げてたの!?
マジ焦ったわ~ 」
高野が俺に怒鳴り返してきた。
「お前気付かなかったの!?」
うなずく俺。
ここで、宿舎に待機していた担任の先生が
慌てて走ってきた。
「お前らに何があったかは、
後でじっくり聞く。グループのメンバーは
ちゃんと揃っているのか?」
先生が言うと、高野が俺たちを見る。
「ちゃんとみんないます・・・」
疲れた声で高野が答えた。
辺りを見た俺。
ここであることに気が付いた。
「あれ、天野は!?」
俺が口にすると、その場にいたみんなが
顔を真っ白にした。
「お前、何言ってんの・・・」
震えながら高野が言い返してきた。
「天野は一昨日、
飛び降りたじゃねぇか!
死んだはずなのに・・・
笑いながら追いかけて来たから
逃げてたんだよ!俺たちは!」
俺はその事実を告白された昨日、
ちょうど学校を休んでいた。
(終)
先生ぐるみで肝試しするのに墓場?墓なんかで遊ぶのはフキンシンって避けない??
と読み進めたら、生徒が自殺したのに肝試し??(゜ロ゜;
時代の違い…なのか?
今どきなら学校が会見開くのにてんやわんやで休校になりそう。