笑われ続けた3年間の最後の日に
これは、趣味でサックスを吹いている同僚の話。
高校に進学してから”女にモテたい”という清々しい理由で吹奏楽部に入って以降、ずっと続けている。
故郷にいた時は裏山で練習していた。
家から20分ほど登った、谷を見下ろす岩場が彼の練習場所。
子供の頃からの遊び場だったらしい。
始めの頃は練習する度に笑われてたよ、と彼は教えてくれた。
田舎のカラスは頭が良くて、人の笑い声やラジオの声を真似るらしい。
カラスに笑われながら3年間、裏山で練習した。
大学への進学で故郷を離れることになり、引っ越し前日にも練習しに裏山へ行った。
帰る時、いつものように「ハハハハハー」という笑い声が聞こえた。
最後までこれかよ・・・と苦笑していたら、「カバレヨー」と言われた。
「まいるよなぁ、不覚にもカラスに泣かされそうになったよ」と彼は言う。
それって本当にカラスだったのか?とは聞けなかった・・・。
(終)
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