もうすぐ死んじゃうよ
これは、死に関する『予知夢』の話。
知り合いの彼は、久しぶりに山奥の実家に寄ったのだという。
実家にはまだ幼い姪がいて、彼によく懐いていた。
一泊した次の朝方、その姪が不気味なことを言う。
「安西さんちのおじさん、もうすぐ死んじゃうよ」※仮名
安西家というのは、近所に住んでいる親戚だ。
何でそんな気味の悪いことを言うのかと聞くと、姪は次のように答えた。
「昨日の夜、夢で見たの。裏の山から大きな黒い猿が下りてきて、おじさんを抱えて山に帰っていくの」
なんだ、夢の話か。
そう苦笑いしている彼に、姪はこう続けた。
「うん、夢だよ。でもね、私の夢の中で猿に連れていかれた人、みんな死んじゃってるよ。夢を見てからわりとすぐに」
えーっ!?
言葉が継げなくなった彼に、姪は釘をさした。
「家の人に言っちゃダメだよ。私がそんなことを言ってるの知ったら凄く怒るから。夢なんて自分じゃどうにもならないのにね」
そう言う彼女は、とても不服そうな顔をしていた。
街に戻ってから一ヵ月後、姪が言っていたおじさんが急死した。
実家から連絡を受けて、鳥肌が立ったという。
以降も変わらず姪とは交流しているが、あの夢の話は口に出せないらしい。
うっかり自分の死を予言されたらどうしよう・・・。
ついついそんなことを考えてしまうからだそうだ。
(終)