頑張るさんと呼ばれる便所の神様
これは、先輩の話。
彼は卒業後も度々、部活の指導や手伝いをしに来てくれていた。
その都度、各地の興味深い山話を聞かせてくれた。
「ある小さなキャンプ場なんだけどさ、一応トイレがあるんだ。
汲み取りだけど。
でも一番奥まった大用の個室は誰も使う奴がいない。
そこで用を足しているとね、覗かれるっていうんだ。
いや、人に覗かれるんじゃない。
牛だってさ。
しゃがんでると、天井の方からモゥモゥ聞こえてくるんだって。
振り仰ぐと、ニヤニヤ笑ってるような顔の、牛の首だけが見えるんだと。
こっちの用が済むと掻き消すように消えるっていうけど。
逆に言えば、用が済むまでは消えないってことだよな。
この牛さん、『頑張るさん』って呼ばれて、便所の神様ってことにされてる。
本当にそうなのかは誰も知らないけど。
前から疑問なんだけど、一体この牛さん、何を頑張ってるんだろうな」
※古典上の加牟波理入道|参考
十返舎一九による読本『列国怪談聞書帖』には「がんばり入道」と題した以下の話がある。大和国(現・奈良県)で、淫楽に取りつかれた男が、一族の者に性癖を諌められたために剃髪して山中の小屋におり、白目をむいて女たちを見張るので、「眼張(がんばり)入道」とあだ名されていた…(Wikipediaより)
(終)