ぎゅうぎゅう詰めの電車内での怪
これは、私が学生の頃に体験した話です。
毎朝の通学に使っていた電車は、全国的にもかなりの乗車率を誇る路線でした。
いつもいつも人がギチギチの状況で、駅に止まって人が乗り降りする度に「痛い!」だの「押さないで!」だの悲鳴が上がり、腕の上げ下げも思うように出来ないほど。
でも当時はそんな車内にも慣れっこだった私は、周りの人たちを支えにしながら立ったまま少し眠ることもよくありました。
それが起きたのは、いくつ目かの駅に電車が止まった時でした。
また人がワーワー言いながら出入りして揉みくちゃになっていると、“手でしっかりと掴まれた感触”があったのです。
もちろん私はビックリして一瞬で目が覚めましたが、脳が働く前に降りる人の波に押されて一旦ホームへ。
降りてくる人たちは何事もないようにしていましたが、さっきの出来事が気になっていた私は、車内をホームからじっと見ていました。
けれど、いつもの混雑している様子があるだけでした。
結局、まだ目的の駅ではなかったのですが、その電車には不安で再び乗れませんでした。
なぜなら、あの時に掴まれたのは、私の手ではなくて『足首』だったからです。
(終)