自殺があった隣の空き部屋から

集合住宅

 

これは4年前、独身寮に住んでいた時の話。

 

当時寮で自殺があり、私はその自殺があった部屋の隣に住んでいた。

 

その自殺から半年ほど過ぎた頃、毎晩のように隣の部屋から男女の話し声が聞こえ始めた。

 

自殺があった隣は空き部屋のまま。

 

私は自分で狂ったのかと思い、同僚に一晩一緒に泊まってもらった。

 

そして夜中になると同僚も「聞こえる…」と言うので、二人で隣の部屋のドアをノックした。

 

浮浪者か何か、とにかく不法侵入だろうと、手にフライパンと鍋を持って。

 

人間に違いないと二人とも確信していたので、怖さは薄れていた。

 

だが、何度ノックしても出てこない。

 

ドアのノブを回してみると鍵が開いていたので、注意しながら少しずつ開けようとするが、妙にドアが重かった。

 

そして数センチ開いた隙間から、何かが見えてドアを開ける手を止めた。

 

人の腕。

 

服を着ていたので定かではないが、おそらくそうだと思う。

 

すぐに警察へ通報した。

 

警察が確認したところ、状況はこうだった。

 

男がドアのノブで首を吊っていた。

 

女も部屋の中で死んでいたらしいが、どんな状況だったかは私は見ていないし、警察にも聞かなかった。

 

警察からは「どうして異変に気付いたの?」と聞かれたが、「話し声がして…」としか言いようがなかった。

 

ただ、死後数日だったという。

 

さらに警察からは「お祓い行ったら?」と言われた。

 

翌年その独身寮は取り壊され、今は更地に。

 

それに伴って引っ越したが、今でもたまに壁から声が聞こえるが、害は無いし、慣れてしまった。

 

妻は何も聞こえないそうなので、きっと私がおかしいのだろう。

 

(終)

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