鏡の中から子供をさらおうとするもの
これは、昨夜あった奇妙な体験話。
うちは妻と1歳の子供の3人家族なのですが、いつも子供と妻は私より早く寝て、私は少し夜更かしをしてから寝ます。
昨夜もいつもの通り二人が寝てから、少し夜更かしをしてから寝室へ行きました。
妻は熟睡で、子供もゴロゴロと転がりながら熟睡しています。
うちの子はかなり寝相が悪く、朝起きると布団からはみ出ていることも珍しくありません。
そんな感じで寝返りを打つ子供をぼんやりと見ていたら、その動きに違和感を覚えました。
いきなりブレイクダンスのように背中で頭と足が逆さになるように回ったり、足で蹴った様子もないのに頭の方に20センチくらい動いたり。
ただ、その時は激しいなぁくらいにしか思わず、ぼんやりと見てました。
そのうち、とうとう布団からはみ出て床に転がってしまったので、やれやれという気持ちで子供に近づき、抱こうとした時でした。
先ほどとは全く違う、異様な感覚に襲われました。
背筋を何かが伝わるような、全身の毛が立つような、物凄くゾッとする感覚です。
とっさに私は部屋の角を見ていました。
そこには高さ170センチくらいの鏡が置いてあり、その鏡をじっと凝視しました。
そこには自分と子供が映っていて、特に何もないかと思った矢先、鏡の下の方に何か“黒いもの”が映っているのが見えました。
モゾモゾと動くその黒いものを何だろう?と思って見続けていると、“白いもの”が何本か伸びてきて、フラフラと動いています。
コンタクトを外していたのでぼんやりとしか見えず、よく見ようと鏡に少し近づいたところ、また全身の毛が一気に立ちました。
黒いものは『ボサボサの髪の毛が生えた後頭部』で、白いものは『ガリガリの腕』だったのです。
鏡に映ったソレは、必死に奥に映っている子供に腕を伸ばしていました。
何だこれ!?と必死に理解しようとじっとその様子を見ていると、腕が不自然にどんどんと伸びていきます。
そして、子供に触れる…。
機会を伺うように子供の周りで動いていました。
時々子供に触れるくらいに近づき、そのたびに子供は激しく寝返りを打っていたのです。
そんな動きを少しの間繰り返していたと思えば、やがて一本の腕が強引に足を掴みました。
次の瞬間、子供の体が背中でくるりと回り、鏡の方へとズズっと動きました。
子供は激しく動き、何回も寝返りを繰り返しています。
まるで腕を振り払らおうとするように。
気づけば私は叫んでいました。
内容は覚えていないのですが、何かを叫んで必死に子供を抱きかかえ、自分の布団に潜りました。
そして、いつの間にか朝でした。
いつものように子供を抱いた妻に起こされた後、周囲と鏡を見ても何もない、普通の朝の光景でした。
よくこの手の話にあるような、子供の足にアザが残っていた等もなく、妻に聞いても何も知らないとのことでしたが、本当に怖い体験でした。
ただ一つ確かなのは、眠りにつく前の出来事なので決して夢ではない、ということです。
(終)