霊の存在を信じざるを得なかったアパート
俺は昔から猫を多頭飼いしている。
最大で10匹くらいだが、やはり引っ越すことになると一番困るのが新居だ。
そもそもそんなに引っ越しはしないのだが、一度だけどうしても仕事の都合で引っ越す必要があった。
そこで見つけたのが、普通のアパートでペットの多頭も可。
それなのに、何故か家賃がやたらと安い。
都内で2部屋+台所風呂トイレ付きで4万円台なんて異常だ。
さては…と思って案内してくれた不動産屋の担当者に、「事故物件ですか?」と聞いてみたら案の定そうだった。
ユニットバスのトイレで女性が心不全のために亡くなったという。
だが、お化けやらを信じていないと関係ないだろうと思った俺は、そこに入居を決めた。
そして入居からしばらくした頃、猫が毎晩トイレのドアの前に集合するようになった。
それも同じ時間に。
たまに何匹かが急に立ち上がって、ドアに猫パンチまでする。
壁などに止まったハエを叩くみたいに、パンチパンチとするのだ。
毎晩、毎晩。
それも猫は1匹残らず集合するのだ。
さすがに、あそこに住んでいた時期は霊の存在を信じざるを得なかった。
ちなみに猫たちは、ひと月もしないうちに飽きた模様で。
あの部屋に住んでいた時は、夜中にトイレに行くのがいつも修羅場だった。
(終)