生まれて間もない頃の奇妙な記憶
これは、私が生まれて間もない頃の話。
なぜか当時の記憶がある。
夢かもしれないが。
赤ん坊の私が病院のベッドに寝ていると、青空が見える窓の外から、火に包まれた落ち武者風の『男の首』が病室の中に入ってきた。
不思議と恐怖はなかった。
病室には誰もいなくて、音もなかった。
その首は目を見開き、何かをブツブツ言いながら、天井に近い高さの室内を大きく円を描くようにぐるぐる回った。
時間の感覚がなく、どのくらい続いたかはわからない。
そして私の真上で止まったかと思うと、ゆっくりと降りてきて私の胸の中に入った。
その後に呼吸が苦しくなるところで記憶は途切れている。
気になって母に、その頃に何かなかったかと聞いたことがある。
母曰く、生まれた次の日に呼吸ができなくなり、生死の境をさまよったことがあったという。
その数十年後の昨日、夢に『その首』が現れた。
笑っていた。
(終)
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