震災後の避難所での不思議な体験
これは、『3.11東日本大震災』の直後の体験話。
私は避難所になった近所の学校へ、お手伝いに行きました。
夫は教員で、自分が勤める学校の避難所運営で帰宅できませんでした。
1人でいるより集団でいる方が安心かなと思って、お手伝いに行った次第です。
当時はまだ高速も閉鎖されており、遠方から身柄の引き受けに来る人が真夜中に来たりしたので、運営スタッフも24時間体制で対応していました。
震災2日目の夜、たまたま夜番の人が1人足りなかったので、良い経験かと私は朝まで避難所のお手伝いをすることにしました。
停電している上に灯油もないため、その夜はわずかな灯りを囲んで皆が毛布に包まって起きて、あれこれ喋っていました。
夜も更けた頃、昇降口の外に人影が見えたので、「あ、誰か来た!」と昇降口の扉に向かいました。
時間は、はっきりと覚えていません。
そこには親子3人が手荷物もなく、薄汚れた格好で昇降口の外に佇んでいました。
私は扉を開けて、「こんばんは。寒いから中へどうぞ」と声をかけました。(当時は雪が積もっていました)
しかし、応答がありません。
というより、反応がないのです。
あれ?と思い、「どうされました?中に入れますよ。食べ物もお分けできますから」と言っても、まったく反応がありません。
すると後ろから、「どうしたの?」とスタッフの声がしました。
「いや、この方々が…」
そう言いながら改めて見ると、誰もいませんでした。
スタッフの方いわく、「突然あなたが昇降口に行くからトイレかと思ったんだけど、何か喋ってるから、あれ?と出てみたら、あなた闇に向かって話してたよ」と。
冷静に考えると、当時は停電、街灯もなし、昇降口の足元だけに小型のランタンがあっただけです。
外に立っている人が薄汚れた格好なんて、わかるはずもないのです。
平時なら怖いと騒動になるでしょうが、当時はああいう状況だったので、私を含めて皆さん冷静に手を合わせることができました。
(終)