毎晩、呼鈴が鳴らされるので
友達から聞いた話です。
友達はある大学に受かって、
東京で一人暮らしをしています。
ある時、部屋で何気なく
テレビを見ていたら、
呼鈴が鳴りました。
何だろうと思って
戸を開けてみると、
そこには誰も居ませんでした。
質の悪いイタズラだと
思っていましたが、
それはその日から
何日も続きました。
一ヶ月くらい経った頃、
さすがに耐えきれなくなって、
警察へ相談に行きました。
最初はあまり相手に
してくれなかったけれど、
彼は切実に訴え、
また、ストーカー殺人が
あった事もあり、
警察が家に来てくれる
ことになりました。
次の日、私服警官が二人、
彼の家に来ました。
呼鈴が鳴らされるのは、
大抵22~23時くらいでした。
警官は21時頃に来て、
一人は彼と室内に、
もう一人は部屋の入り口が見える
物陰に隠れていました。
部屋の中にいた警官は
若いということもあり、
話が弾み、
呼鈴のことも忘れていた時、
「ピーンポーン」
と、いつもの様に
呼鈴が鳴りました。
警官は注意深くドアを開けましたが、
やはりそこには誰も居ませんでした。
急いで隠れている警官の所に行き、
「おい、誰か来たか?」
と聞きました。
もう一人の警官は、
誰も来てないと言いました。
「ひょっとして、故障とかしてるんじゃ
ないですか?」
物陰に隠れていた警官がそう言い、
チャイムを確認しました。
スイッチを押しても音がせず、
故障だよと笑っていたら、
部屋の中に入っていた警官が
青い顔をして外に出て来ました。
「ちょっと来てくれ」
そう言われて中に入って
彼が指を指す方を見ると、
そこには呼鈴本体がありました。
「これがどうかしたんですか?」
彼は何故、警官がそんな顔を
しているのか分かりませんでした。
警官は、ゆっくりとした口調で
言ました。
「よく見てみろ・・・、これには
電池が入ってないんだぞ・・・」
(終)