ブランコに呼ばれた恐怖の夜
これは、一人暮らしを始めて間もない頃の恐怖体験話。
当時住んでいたアパートの前には大きな公園があった。
昼間は子供たちが元気に遊び、主婦たちの交流の場にもなっていた。
ある日、翌日が休みだったので、久しぶりにDVDを借りに行こうと思い、徒歩で近くのビデオ屋に向かう。
そのビデオ屋は午前3時まで営業していたが、私が行った時にはすでに深夜0時を過ぎていた。
しかし、週末だったせいか、面白そうなタイトルはほとんどない。
仕方なく手に取ったタイトルを持ち、店を後にする。
そしてタバコを咥えながらアパートのすぐ傍まで来た時、タバコの買い置きがないことに気づき、近くのコンビニへ行くことに。
目的のコンビニは、アパート前の公園を横切って行ける距離にあった。
私は借りてきたDVDを片手に、公園へと足を踏み入れる。
公園は街灯が4つしか点灯しておらず、夜の雰囲気は不気味だったが、私はあまり気にせず歩いていた。
その時、公園の隅の方から子供の声が聞こえた。
私は「こんな時間に?」と思いながら、暗闇の中を見渡したが、人影はない。
気味が悪いと感じつつも、この時間に子供の声を放っておけない性格なので、声の方へ歩いていった。
しかし、行かなければよかった…。
ブランコの一つには花束が置かれ、子供の描いた絵やメッセージがあった。
次の瞬間、驚いた私の目の前で、ブランコがゆっくりと動き出した。
足が動かない。
ブランコの金属音と共に子供の声が聞こえたが、何を言っているのかはわからない。
必死に足を動かし、私はブランコを見つめながら後ずさりした。
しかし、ブランコは揺れ続けた。
やっとのことでアパートに辿り着き、震える手で部屋の鍵を開ける。
すると、壁中に泥だらけの『小さな手形』が付いていた。
床には数百にも及ぶ『小さな靴の跡』が残されていた。
その日からしばらく実家に帰り、2週間後にアパートを引き払った。
(終)