ただ事ではないオバァの胸騒ぎ

比嘉さん(仮名)は、

30代の公務員。

 

沖縄県石川市(現うるま市)

アパートがあるのですが、

 

その日は法事のため、

 

隣の恩納村にある、

オバァの家に来ていました。

 

無事に法事も終わり、

親戚との会話も弾み、

 

酔いもまわって、

気付くと夜遅くになっていました。

 

「オバァ、じゃあ帰ろうね」

 

と、タクシーを呼んで

帰ろうとすると突然オバァが、

 

「今日は嫌な胸騒ぎがするから、

あんた、塩を持って帰りなさい」

 

「は?要らないよー(笑)

 

「持って行きなさい!」

 

押し問答が数回続いた後、

根負けした比嘉さんは、

 

嫌々ながら塩をカバンに詰め込み、

タクシーに乗り込んだそうです。

 

恩納村からタクシーで

石川市まで帰っていた途中、

 

幽霊レストランの近くで、

 

万札しか持っていないことに

気付きました。

 

(出ると有名で何回も店が変わる、

いわくつきのレストラン。

 

今はあるか分からないです)

 

そのことを運転手に伝えると、

 

「んー困ったなー。

 

深夜は細かいのを

用意してないんですよ・・・。

 

ちょっと待ってて下さいね。

両替してきます」

 

当時はコンビニもなく、

 

運転手さんは車を止め、

外へ走っていきました。

 

辺りを見回すと、

 

民家は少なく、

周りは暗い森ばかり。

 

街灯もありません。

 

ヘッドライトだけが、

道路をほんのり照らしています。

 

「ここ、幽霊レストランの近くだし、

気味悪いな~」

 

と、早く運転手が帰って来るのを

祈っていると、

 

ヘッドライトの先、光りが

届くか届かないかのところに、

 

ポツンと男の人が立っているのに

気付きました。

 

「あれ?運転手さんかな?」

 

しかしよく見ると、

 

その人の顔は見えませんが、

赤いネクタイをしています。

 

「運転手さんは白いワイシャツだし、

違うなぁ。こんな夜中に妙だな・・・」

 

と思っていると、

 

赤いネクタイの男がこちらに一歩、

近づいて来るのが見えました。

 

その瞬間、

 

「バンッ!」

 

閉まっていたはずの自動ドアが、

勢いよく開きました。

 

「バンッ!」

 

男が一歩ずつ歩くたびに、

ドアが開きます。

 

「ヤバイっ!」

 

と思った比嘉さんは、

必死になってドアを閉めましたが、

 

ドアは

 

「バンッ!」

 

右を閉めると左が開き、

 

「バンッ!」

 

左を閉めると右が開きます。

 

前後左右開いては閉めを

何回か繰り返し、

 

「間に合わない!」

 

と思った瞬間、

 

すぐ目の前に、

 

赤いネクタイの男が

立っていました。

 

男は赤いネクタイを

しているのではなく、

 

真っ赤な舌がヘソまで

伸びていたのです。

 

「うわぁー!」

 

パニックになった比嘉さんは、

 

慌てて周りにあるものを

無我夢中で投げました。

 

「お客さん!

大丈夫ですか、お客さん!」

 

飛び起きると、

 

運転手が心配そうな顔で

声をかけていました。

 

「夢か・・・」

 

しかし、周辺には

散乱した荷物と、

 

オバァから貰った塩が

散らばっていました。

 

比嘉さんは、

 

さっきの出来事を

運転手に話しました。

 

すると、運転手は途端に

青白い顔をして、

 

こう話しました。

 

「最近、同僚がここらへんで

首を吊ったんですよ」

 

中学の頃、

英語の先生から聞いた話です。

 

オバァ、凄い・・・。

 

(終)

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