弟の3回忌で読まれていた危険なお経
これは、数年前に体験した後味の悪い話。
私の弟は19歳の時に事故で死んだ。
それ以後、毎月死んだ日の月命日に、お寺さんに来てもらっていた。
いつもはわりと高齢のお坊さんが来ていたが、その日は若いお坊さんが来て、父に「一度食事にでも行きませんか?」と誘った。
後日、その若いお坊さんは高級車で迎えに来て、高級ホテルの上層階で食事をし、その後は一等地のクラブで酒を飲んだ。
そして、その後もそういったお誘いが何度かあった。
しばらくして、弟の3回忌の法事の前に、突然その若いお坊さんがこう言い出した。
「私が後住に決まりました。つきましては、○○さん(父)に檀家総代になっていただきたいのですが」
※後住(ごじゅう)
後任の住職。
檀家総代になれば、お金もかかり、また母に甲状腺の癌が見つかって手術の予定も入っていた為、丁寧に断った。
だが、若いお坊さんは明らかにムッとした顔をして、「あれだけのことをして差し上げたのに、こんなところで恥をかかされるとは思いませんでした」と怒り出した。
ただ、他の客も居たので言い争いにはならなかったが、その後の3回忌の席上でのお坊さんの声は刺々しく、なぜかお経がとても気持ち悪く聞こえた。
法事の後、親戚らも「今日のお経は気持ち悪かったね」という声がちらほら聞こえた。
数日後、その3回忌に来てくれていた従弟から連絡があった。
従弟は実はその3回忌の様子を録画していて、思うところがあって知り合いのお坊さんにその映像を見てもらったそう。
すると、その知り合いのお坊さんが一言、「これは読んだらダメなやつだ・・・」と呟いて、顔が真っ青になっていたという。
読んだらダメなお経とは何なのか?
その問いにも一切答えてくれず、「とにかくこの映像は今すぐ削除するように」と言われた、とのことだった。
翌日、うちにお寺の一番偉い人と、さらにお付きの人のようなお坊さん2人が来て、「3回忌で読むお経を間違えました。こちらの手違いです。申し訳ございません」と頭を下げた。
あまりの突然のことに、両親も私も訳がわからず・・・。
「とにかくこちらの手違いなので、この前のはなかったことにしてほしい。今から改めてお経を読ませていただきます」
そう言って、3人で長いお経を読んでくれた。
ただ、お金を準備していなかったので慌てていたところ、「お金は結構です。本当に申し訳ございません」と、また頭を下げられた。
それ以後、その若いお坊さんがうちに来ることはなく、しばらくしてから「あの若いお坊さんは他のお坊さんの嫁と駆け落ちをして新しくお寺をつくった」と聞いた。
(終)