ベビーシッターと若い男のやりとり

ベビーシッター

 

昔、イギリスの小さな町に、

 

二人の赤ん坊の世話を任された

ベビーシッターがいた。

 

そのベビーシッターを雇っている

家は大富豪で、

 

家の主と妻はいつも忙しくて

家にはいなかった。

 

そんなある日の昼、

その家の電話が鳴った。

 

二階に赤ん坊たちを寝かしつけた

ベビーシッターは、

 

一階で掃除をしている時に、

その電話を取った。

 

「もしもし、どなた?」

 

「俺の名はルーシー・コスビーだ」

 

その頃のイギリスで、

ルーシー・コスビーと言えば、

 

赤ちゃん殺しのルーシー

として有名で、

 

無差別に何の罪もない

赤ん坊を次々に狙う、

 

凶悪な殺人犯の名前だ。

 

しかしベビーシッターは、

 

イタズラは止めて下さい!

と言って、

 

全く相手にせずに、

電話を切った。

 

だが・・・

 

しばらくして、

また電話がかかって来た。

 

「俺の名は、

ルーシー・コスビー。

 

今、どこかの家の赤ん坊を

殺したところさ」

 

と言った。

 

「いい加減にしなさい!」

 

ベビーシッターは少し

怒り気味で電話を切り、

 

オペレーターに相談した。

 

「その男からの電話を

逆探知いたしますので、

 

次にかかってきたら

話を長引かせて下さい」

 

と言われた。

 

案の定、電話が鳴り、

 

「俺の名は、

ルーシー・コスビー。

 

今、どこかの金持ちの

赤ん坊を殺したところさ」

 

「分かったわ!

 

あなた、悪ふざけも

いい加減よしなさい!」

 

などと、

 

オペレーターに言われた通り、

話を長引かせて電話を切ると、

 

すぐにオペレーターからの

電話が鳴った。

 

「いいですか・・・

 

今すぐあなたは

その屋敷から出なさい!

 

逆探知の結果、

 

電話の発信場所は、

その屋敷の二階です!

 

とオペレーターが言った。

 

ベビーシッターは電話を切り、

 

何かの気配に気付いて

後ろを振り向くと、

 

そこには血がべっとり付いた

包丁を持った、

 

若い男が立っていた。

 

「俺の名は、

ルーシー・コスビーだ。

 

今、二階の赤ん坊二人を

殺してきた」

 

と言った。

 

しかし、

 

ベビーシッターは冷静に

こう言い返した。

 

「それは違うわね。

 

だって、あたしが本物の

ルーシー・コスビーですもの」

 

次の日、

 

その屋敷の二階には、

 

二人の赤ん坊の

惨殺死体があった。

 

さらに一階には、

 

赤ん坊以上に

酷い殺され方をした、

 

若い男の死体が

見つかったそうだ。

 

その後、

 

ベビーシッターの行方は

未だ分からないという。

 

(終)

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